有機物質化学研究室

Laboratory of Organic Material Chemistry

2017年度研究テーマ
 ✓化粧品技術・表面技術
 ✓ホモキラリティー起源
 ✓時空間パターン発生
 ✓ジャイアントベシクルの形態制御
 ✓水溶液中を自ら泳ぐ(自己駆動する)油滴の運動制御
   

自己駆動する油滴の運動制御 研究テーマ

通常,界面活性剤(例えばセッケン)水溶液中に油成分を加えると,油滴は容易に溶解します。しかし,ある特定の分子構造を有する油成分と界面活性剤の組み合わせでは,油滴は溶解せずに,むしろ水中を自発的に泳ぐ(自己駆動する)ことを見出しました。そのときの油滴の内外ではある特徴的な流れ場が形成されていることが最近になって分かってきましたが,そのメカニズムの詳細は未だ明らかにされていません。現在はそれを明らかにすると共に,pH変化や光照射といった外部刺激を与えることにより運動の制御を行うことで,電場や磁場などの強力な外場を必要としない,省エネルギー型の運搬体としての応用を目指しています。

これまで,自己駆動するだけでなく,反応性の界面活性剤を用いたり,油成分を2種類用いてそれらが反応するような条件にしたりすることで,分裂する油滴,融合する油滴,一方向に駆動する油滴の構築に成功しました。
自己駆動しながら分裂する油滴① 自己駆動しながら分裂する油滴②
分裂①
分裂②

融合する油滴

一方向に自己駆動する油滴
融合
一方向

例えば,分裂する油滴は,ベンズアルデヒド誘導体(油成分)を,塩酸を含んだ反応性の界面活性剤水溶液中に分散させると観測することができます。これのメカニズムは,以下のように推定されています(下の図参照)。
①界面活性剤が水相中で加水分解されることでベンズアルデヒド誘導体が生成する
②油滴(親油滴)が自己駆動しながらバルク水相からそれを取り込むことで,内部に新たな油滴(娘油滴)が生じ,徐々に肥大してくる
③娘油滴が自己駆動ができるようになるまで成長すると,親油滴の殻を破って出てくる

このような,外部から化学物質を取り込んで,内部で何かしらの反応(この場合は娘油滴の肥大化)が進行し,動的な挙動が現れる,という一連のダイナミクスは,まさに細胞(生命システム)が行っている新陳代謝に類似しています。この点から,自己駆動する油滴は生命にみられるダイナミクスのモデルとしても注目されています。水,油,界面活性剤という比較的単純な分子群により様々な油滴の運動が実現できることから,このような油滴が生命起源の初期にみられたダイナミクスのモデルとして議論が出来るようになるかもしれません。

当研究室では,界面活性剤あるいは油分子の分子設計および合成を通じて,自己駆動する油滴のメカニズムを解明するとともに,その運動制御を行うことで,新たな省エネルギー型の運搬体としての応用を目指しています。また,素性のよく知れた分子群を用いて生命システムにみられる特徴的なダイナミクスをつくりだすことは,生命をより深く理解するための有効なツールになるものと考えています。
 
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