-第16回「非線形反応と協同現象」研究会 ポスター発表一覧-

“Non-linear Reaction and Corporative Phenomenon -Science for Art, Education, and Technology- ”

P-1

錯体形成と結合したマルチモードスイッチングの研究

○有馬 美恵、中田 聡(奈良教大)

   生物に学ぶ自律運動系の運動モード制御について、 化学反応と運動との結合に関する実験的研究を行った。具体的には、配位子を自律運動素子とし、金属イオンを含む水相に浮かべたとこ ろ、金属イオンの種類、濃度、及び温度に依存して、特徴的な運動モードが生じることを見出した。これらの運動モードスイッチング現象が 生じる要因を、金属錯体の安定度定数と活性化エネルギーと関連させながら議論したい。

P-2

光BZを用いた時空間のデザイン

○松下 真理子1、中田 聡1、北畑 裕之2(奈良教大1、京大院理2

   ろ紙に浸み込ませたBZ溶液に液晶プロジェクターで照射する系は、パソコンのお絵かきソフトを使って反応場と照度条件を多彩に変えることができる。その中で、wave trainやsingle waveに対する光刺激について特異的な時空間発展現象が見られたので報告する。

P-3

水・樟脳系における界面の振動

○北畑 裕之1、川田 紘平2、中田 聡2(京大院理1、奈良教大2

   樟脳は界面活性をもち、水面に樟脳の粒を浮かべると表面張力勾配により自発的に運動することが知られている。今回、樟脳粒を水面に固定すると、水面が振動する現象が観察された。この現象は、非平衡条件下での自発的振動現象という点から興味深い。本発表では、現象の紹介ならびに、樟脳単分子膜の分布、Marangoni対流、接触角変化などを考慮したメカニズムについて報告する予定である。

P-4

CIMA反応によりバッチ型ゲル反応系に一時的に生じるチューリングパターンの固定化

○小西 諒1、朝倉 浩一1、鎌田 正純1,2(慶大理工1、山野美容芸術短大2

   アガロースあるいは寒天ゲルで作製したバッチ型化学系中でCIMA反応を進行させ、一時的にチューリングパターンが形成される条件を見いだした。チューリングパターンが形成されている時間帯に、ゲル上に硝酸銀水溶液を流し入れたところ、全く同じ空間周期的な模様がゲル上部に残存した。この時間帯には、I-の濃度が空間周期的に分布しており、ゲル中に浸透した硝酸銀と反応して、ヨウ化銀として析出したものと考えられる。

P-5

Analysis of the Mechanism of Asymmetric Amplification in the Chemical System Including Two Metals

○磯田 勇気1、朝倉 浩一1、Dilip K. Kondepudi2、山口 智彦3(慶大理工1、Wake Forest Univ.2、産総研3

   不斉増幅とは、キラル触媒を用いてキラル生成物を合成する不斉合成の中で、触媒よりも生成物の光学純度が高くなる現象を指す。本研究では、有機亜鉛および有機チタンの2種の金属を含む化学系における不斉増幅について、そのメカニズムの検討を行なった。試薬を加える順序を変えると反応挙動に大きな違いが観察され、特にどちらの金属種を先に加えるかが、生成物の光学純度および反応速度に強く影響を与えることが見いだされた。

P-6

パターン形成における外部寄与によるエントロピー生成

〇真原 仁1,2、山口 智彦1、西浦 康政3、下村 政嗣3(産総研1、科学技術振興機構CREST2、北大電子研3

   前回まで、パターン形成とエントロピー生成の関係を示してきた。この前回までのエントロピー生成は系内部によって生成しているエントロピーの時間微分である。今回、系内部の寄与だけはなく外部との相関によるエントロピー生成を計算した。これにより系全体のエントロピー生成が計算可能となった。

P-7

2つの電気化学振動の共存による分岐現象とカオス振動の出現

○向山 義治、菊池 光延、岡本 博司(東京電機大学理工)

   過酸化水素および過硫酸イオンの白金電極上での電気化学的還元反応において電流の自発的な振動がみられる。これらの2つの振動は単独では安定な周期的な振動(リミットサイクル)である。これらの振動は同じ電位で起こるため、溶液に過酸化水素と過硫酸イオンを共存させて2つの振動をミックスさせることができる。その結果、周期的な振動が分岐しカオス振動が発生したので報告する。

P-8

ギ酸酸化で見られる新しいカオス振動

〇菊池 光延、向山 義治、岡本 博司 (東京電機大理工)

   酸性溶液中、白金電極上でギ酸を酸化すると、一定電流条件下で電位に周期振動が生じる。ここに塩化物イオンを添加すると、3×10-7 Mから1×10-5 Mの濃度範囲で振動波形にカオスが出現することを見出した。すなわち大振幅と小振幅の振動の混合波形が生じ、小振幅振動に2回の周期倍分岐に続いてカオスが見られたり、周期3が見られたりした。このような現象の原因をボルタモグラムから考察した。

P-9

三次元BZ反応への磁界の影響

○高田 美緒、谷野 章、青柳 里果(島根大生物資源)

   鉄イオンの酸化還元反応による色の変化が周期的に見られるBZ反応への磁界の影響を検討した。BZ反応は、試験管などの底の深い容器中では三次元的なパターンが見られることが報告されている。本研究では、密封した試験管内でのBZ反応生成パターンについて、磁石の有無で比較した。その結果、磁界暴露の有無によるパターン生成の差が顕著に表れ、磁界暴露が BZ反応のパターン形成に及ぼす影響が観察できた。

P-10

BR反応相互作用観測のための連続撹拌装置の開発

○津曲 岬、青柳 里果(島根大生物資源)

   無色・褐色・青色の周期的な変化の見られるBR反応が観察できる連続撹拌装置を複数連結し、反応容器間の相互作用を観察した。蛍の光の同調・細胞分裂の同調など、生物界での振動現象にはさまざまな相互作用が見られるが、人工的なシステムでも同調が見られることは報告されている。本研究では、相互作用観察の基礎的検討として装置の開発を行った結果、3個の容器を連結した系で三次元的なBR反応が観測された。

P-11

密度振動子の流れの転換過程U

〇加納 剛史、木下 修一(阪大院生命機能)

   密度振動子は、底に管がついた容器に重い流体を入れ、軽い流体が入った容器に取り付けると、管を介して流体が振動する現象である。その振舞いは上向き・下向きの流れそれぞれについて理解されてきたが、流れの転換のメカニズムは明らかになっていない。前回は流れの転換を起こす際の水面の高さが流体の粘性率に依存することを報告したが、今回は流れの転換の様子を実体顕微鏡を用いてより詳細に観察し、結果に対する定性的な考察を行った。

P-12

水性二相および油水系における液滴の凝集、拍動、出生、損傷、治癒および採餌現象

○伴 貴彦1、山上 智子2、喜多 剛士1、富永 治稔1、鈴木 翔1、塩井 章久1(同志社大工1、山形大工2

   水性二相系においてDEHPAを含ませた液滴を、生成するとお互いが凝集する現象や、一つの液滴に他の液滴群が集まり、その液滴を“食べる”現象が観測された。TSAC水溶液中にフェニルボロン酸を含む油滴を生成すると並進運動が見られ、DEHPAを含ませると液滴の拍動が観測された。また緩衝溶液にDEHPAを含ませた油滴を生成すると油滴中心部に穴が形成され、やがて復元した。

P-13

水溶性シアン化銅錯イオンのペルオキソ二硫酸イオンによる酸化反応の非線形性の検討

○畠山 雅史、本田 数博(神奈川工科大工)

   水溶液中のシアン化銅(T)錯イオンがペルオキソ二硫酸イオンによる酸化過程において、pH値が自己触媒反応系に特有なS字曲線を描く時経列変化を示すことを見出した。pH値のS字曲線の時間発展に対して初期シアン化物イオン濃度の依存性について検討した。また、反応過程のカロリメトリーから本反応の熱力学的検討も行った。生成物の同定も踏まえて、反応機構およびその非線形性について報告する。

P-14

炭素材料へのマイクロ波照射によるプラズマ発生に伴う間欠音の測定

○千葉 拓也、本田 数博(神奈川工科大工)

   導電物質である炭素材料に対して家庭用電子レンジを用いたマイクロ波照射実験を行った。炭素材料はマイクロ波照射によりその先端部分の電子の密な部分において放電し、数千度の炭素プラズマを発生すると同時に、その過程において不連続音を発生する。プラズマ発生する様子を音および画像の非線形な時経列データとして測定し、マイクロ波照射前後の炭素材料のSEM観察などを含めてその非線形性について検討した。

P-15

外部刺激による独立な振動子の同期

○永井 健、中尾 裕也、新井 賢亮(京大院理)

   モラン効果など独立な振動子に共通の外部刺激を加えることで独立な振動子が同期することが実験的にいくつか報告されている。この同期現象について微少ノイズが加わったときの理論解析はあるものの、一般的な議論は困難である。今回発振回路に対して2値ノイズを加えることで、位相の同期現象が起こることを実験的に示す。また、外部刺激によるこれらの振動子の位相変化を観測し、これまでに行われた理論解析との比較を行った。

P-16

人工アメーバ運動

○住野 豊(京大院理)

   濃厚界面活性剤を含む油水系では油相・水相に加え界面活性剤を多く含む中間相が生じる。この系で平衡状態において3相に相分離するように化学種の比率を調整し、それらを油相・水相に分離し油水を接触させると、油水界面上で相分離が進行する。ここで我々は、相分離に伴い油水界面がアメーバに見られる泡形の変形を示すことを発見した。本発表では系の詳細および変形のメカニズムに関して発表する。

P-17

ノイズによって誘起された興奮性結合化学振動子の集団ダイナミクス

○岡野 太治、北川 茜、宮川 賢治(福岡大理)

   フォトリソグラフィー技術を用いて作製したマイクロチャンバー中に、Belousov-Zhabotinsky反応をする要素を格子状に配置し、閾値以上の強度の光を照射することで興奮性要素ネットワークを構築した。この系に時間・空間相関のないノイズを加えたところ、Array-Enhanced Coherence Resonanceが観測された。この結果に加え、このときの位相同期についても解析を行なった。

P-18

メチレンブルー-グルコース系における3次元パターン形成

○神長 暁子(鹿児島大理)

 塩基性条件化におけるメチレンブルー-グルコース反応は、化学反応と対流不安定性によりパターン形成を示すことが知られている。反応溶液をペトリ皿に入れて静置すると、濃度条件に依存して、液層の表面にパターンが形成されるだけでなく、表面と底面の双方に類似したパターンが形成される場合や、3次元のパターンが形成される場合があることがわかった。各々のパターン形成のプロセスについて報告する。

P-19

BZ反応で駆動する化学ロボット

○前田 真吾1、原 雄介2、吉田 亮2、橋本 周司1(早大理工1、東大院工2

 本稿において我々はBZ反応で周期的に屈曲運動する新規ゲルアクチュエータの創製とその歩行運動について報告する。BZ反応は時空間的なパターンやリズムを生成することで知られているが、ゲル内部において反応させるとゲルの機械振動が誘起される。さらにゲル内部の組成に傾斜を持たせることで、ゲルが周期的に屈曲運動する。このゲルアクチュエータと床の非対称性によるラチェット効果によって前進運動させることに成功した。その運動性について考察する。

P-20

接着性制御による構造物の自己複製の実現への試み

○三枝 亮1、前田 真吾1、原 雄介2、橋本 周司1(早大理工1、東大院工2

 構造物を構成するコンポーネントの接着性を制御することによって、構造物を自己複製させるための枠組みについて検討した。さらに、コンポーネントとその接着に用いる材料を検討するための基礎的な実験を行い、コンポーネントのデザインや接着性の制御に必要な材質について考察を行った。

P-21

新規自励振動型相転移エンジンの創製

○大西 健太、橋本 周司(早大理工)

 我々は、有機溶媒が過熱状態のときに生じる液・気相間の急激な相転移振動現象(ガイザリング)を用いた新規エンジンの研究開発を目的とする。まず基礎的なデータとして、ガイザリングにおける密閉容器内の圧力と液・気相の温度を計測し、エンジンの性能を検討した。エンジンを試作したところ、ガイザリングによってゴム膜を周期的に振動させることに成功し、十分な仕事を得られることが分かった。

P-22

高分子溶液を上部から加熱したときに発生する対流に関する研究

○山田 康博、櫻井 伸一(京工維大)

 熱力学的非平衡状態で形成される秩序構造は散逸構造と呼ばれる。ポリスチレン/りん酸トリクレジル溶液を上部から加熱するとミクロ対流が発生することが位相差顕微鏡で観察することにより明らかとなった。試料厚が0.1mmという非常に薄い条件でも対流が観察できるため、ミクロ対流という。これは、熱膨張に起因したRayleigh-Benard対流ではなく、Soret効果による。対流輝度の定量化をすることで、上部から加熱する場合の対流の特徴を明らかにした。

P-23

非線形振動子としてのロウソクの炎の挙動U -炎が励起する対流の乱れの効果-

○田口 淳史、長 篤志、三池 秀敏(山口大院理工)

 先行研究によって、ロウソクの炎が同位相で周期的に振動(約10Hz)することが見出されている。我々の研究グループでは、同位相のみではなく逆位相の非線形振動が出現することを新たに見出した。これらの非線形振動を起こす要因として、ロウソクの炎によって生み出される対流の乱れが振動現象に関係している事を確認した。研究会では対流の可視化とその計測等の結果について議論する。

P-24

空間的に非一様な流体場におけるパターン形成過程

○宮崎 淳(阪大院生命機能)

 撹拌の強さが空間的に非一様な系におけるパターン形成過程について、Belousov-Zhabotinsky反応を対象に研究をおこなった。これは拡散に加えて移流によって物質が輸送される系の一例であり、新しいパターンの形成が予測される。実験では、細長いガラス管中の底部で撹拌子を回転させることで容器の高さ方向に撹拌強度を変化させた系を用いた。その結果、振動停止に伴う定常的なパターンの出現が確認された。

P-25

オレイン酸およびオレイン酸イオン油滴の水和過程において形成される水-油多重界面

○鈴木 航祐、山口 智彦1,2(筑波大院数物科1、産総研2

   オレイン酸およびオレイン酸イオンの混合油を水和させ、ガラス基板上にマルチラメラベシクル様の多重の水-油界面を形成した。水-油滴界面は時間と無相関に揺らぎ、基板付着面付近における表面積は増加した。油滴の水和過程の時空間パターンは界面に当たる領域の内部へ増加を示した。形成した界面の熱揺らぎによる波打ち運動が油滴内部への水和・膨潤を促進し、油滴内部に多重の界面の形成を促進したと考えられる。

P-26

デウェッティングドットパターン・その制御法と形成機構について

○末松 J. 信彦1,2、山口 智彦1,2(筑波大院数物1、産総研2

 高分子溶液を基板に塗布乾燥して得られる高分子凝集体の二次元配列化パターン(デウェッティングパターン)は、気・液・固相の境界線付近における均一状態の不安定化を反映している。この現象の機構は、一成分系において知られている複数の不安定化現象から推論されているが、詳細は良くわかっていない。今回、ドットパターンに着目し、ドットの大きさと間隔の制御を試みると共に、その形成機構を考察した。

P-27

ドラッギングコートにおけるフィンガリング不安定性の制御とその高撥水性表面作製への応用

○石原 司1、黒田 章裕1,2、朝倉 浩一1(慶大理工1、コスメテクノ2

 ガラス基板上に粘性液体をドラッギングコートすると、ヴィスコスフィンガリングによる空間周期ストライプパターンが形成され、ドラッギング速度や基板とアプリケーターとの間隙が、周期特性長や液膜厚に影響を与えることが認められた。さらに、サブmm周期のストライプパターンが形成された状態で水浴処理を施すと、谷部に数μm周期の脱濡れ構造が生じ、この二段階パターンの共存により高撥水性表面となることが明らかとなった。

P-28

スピンコートにおける樹状パターン形成を利用した撥水性表面処理

○柴田直樹1、黒田 章裕1,2、朝倉 浩一1、志澤 一之1、三村 昌泰3(慶大理工1、コスメテクノ2、明大理工3

 疎水性懸濁液をガラス基板上にスピンコートすると、数十μmスケールの放射状の樹状パターンが自発的に形成された。その表面は平滑な液膜表面と比較して水の接触角が5〜20°高くなり、撥水性は、回転中心からの距離、液剤の粘度、および回転速度に依存する傾向が認められた。また、垂直に立てられたガラス基板上を懸濁液が落下する際に形成されるパターンも観察し、スピンコートにおける樹状パターン形成のメカニズムを検討した。

P-29

AgとSbの時空間パターンを形成する、化学反応を伴う相分離

○長峯 祐子、原 正彦(理研局所時空間機能研究チーム)

 AgとSbの共電着系において、黒と白のストライプ構造から成る様々な時空間パターンが電極上に生じる。しかしながら、このパターンの形成メカニズムは明らかにされていない。我々はこのメカニズムの解明を目的として様々な研究をおこなってきた。今回はこのパターンのストライプ幅の時間発展をしらべることにより金属二成分系(AgとSb)の相分離が化学反応を伴いながら、パターン形成に寄与している可能性を紹介する。

P-30

Disolocation glides in microwrinkles

○大園 拓哉1、下村 政嗣1,2(理研FRS1、北大電子研2

 柔らかいゴム上の硬いナノ薄膜は、面内圧縮応力によって変形し、特性波長をもつ微小な皺が自発的に発生する。そのストライプパターンは一軸圧縮下で小数のトポロジカル欠陥:Dislocationを有する。その圧縮方向をゆっくり回転変化させた場合、その欠陥はグライドと呼ばれる規則的な横方向移動を起こす。その挙動が全域でランダムに起こることで、平均的な皺方向が圧縮方向に追従していた。PRE73,40601.

P-31

周期的外部環境変化に引き込まれたアスコルビン酸の結晶成長

○一野 天利、小阪 晃平、河本 敬子、堀部 和雄(近大生物理工)

 パターン形成の研究において、結晶成長はよく知られている例の一つである。アスコルビン酸の結晶成長により、同心円パターンなどが形成されることが知られている。これまでの研究では、結晶成長中の温度湿度条件が一定の場合のパターン形成について行われてきており、モルフォロジーダイアグラムが作成されてきている。今回、周期的に温度や湿度を変化させた環境下での結晶成長の様子を調べたので、その内容について、報告する。

P-32

光溶解表面不安定性によるTiO2上への配列ナノ細溝の形成

○長井智幸、中西周次、福島聡史、辻悦司、中戸義禮(阪大院基礎工)

 特定の結晶方向にまっすぐ伸びた長周期の配列ナノ細溝が大面積にわたり自己組織化形成されることを見出してきた。種々の条件による検討により、この長周期ナノ構造は光エッチングに誘起された表面不安定性により形成されることが明らかとなった。

P-33

電析振動反応における析出物ナノ構造変化の表面増強ラマン散乱による追跡

〇中西周次、深見一弘、中戸義禮(阪大院基礎工)

 液液界面でのAuの振動電析では、微細な層状構造を持つ薄膜が形成する。今回、この薄膜形成過程を表面増強ラマン散乱により追跡した結果、ナノデンドライト結晶が振動現象に同期しながら合体し、薄膜へと構造変化していることがわかった。

P-34

回転円筒内での無機固相化学反応の検討

○土岐 賢一、本田 数博(神奈川工科大工)

 近年の環境問題の観点から物質を合成する過程において極力溶媒を排出しない、低コスト、かつクリーンな化学合成技術の構築が望まれている。我々はその第一歩として溶媒を使用しない、簡単な無機化合物の合成について検討した。すなわち、回転する円筒内において2種の無機化合物を混合することにより高収率な固相化学反応について検討した。得られた生成物はXRD測定結果によりその結晶性について議論した。また、SEM観察より生成した無機結晶のモルフォロジーについて検討した。幾つかの反応系の結果について報告する。

P-35

液相析出法による界面に形成されたTiO2結晶のモルフォロジー

○半谷 剛大、本田 数博(神奈川工科大工)

 液相析出法を用いて、ガラス基板や木質材料の界面に濃度・温度などの条件を変えてTiO2結晶を析出させた。得られたTiO2結晶はXRDより、ガラス基板上ではアナターゼ型とルチル型の両方が同定でき、木質材料上ではアナターゼ型のみ同定できた。またSEMよりTiO2結晶は、異なる条件・界面の影響でさまざまな形状変化をしていることを確認したので報告する。

P-36

活性炭表面でのAg(T)イオンの還元およびAg結晶のモルフォロジー

○齋藤  雅英、本田 数博(神奈川工科大工)

 吸着体である活性炭を硝酸銀水溶液に添加すると活性炭表面でのみAg(T)イオンは還元し、多様な形状のAg結晶が析出することを見出した。化学的手法により反応を詳細に検討した。また、活性炭表面に形成したAg結晶のモルフォロジーについて検討した。得られたデータを踏まえて、イオン化傾向の演示実験でも用いられるAg(T)イオン水溶液/銅酸化還元系における銀樹形成(拡散律度パターン形成)反応との比較を行うことにより、Ag結晶の多用な形状の生成機構について検討した。

P-37

有機無機ハイブリッドGRINレンズの作製

〇大元 純一、朝倉 浩一、二瓶 栄輔(慶大理工)

 有機材料で作られたGRIN光学素子は熱的安定性に欠ける。そこで、ゾルゲル法により調製したシリカゲル内に2種類の有機モノマーを順次拡散させることで屈折率分布を形成させ、自発的フロンタル重合法を用いることで透明なGRIN光学素子を作製することに成功した。また、作製した有機無機ハイブリッド光学素子の熱光学係数は、改善されていることが明らかとなった。

P-38

自己組織化による人工細胞モデル:細胞接合機能の搭載

〇野村 M. 慎一郎、朝山 和喜子、秋吉 一成(東医歯大・生材研、21世紀COE)

 細胞機能モデルを自発的に構成する系の構築を行っている。膜タンパク質コネキシンの無細胞タンパク質合成と細胞サイズリポソームの合成の2つのプロセスをカップリングさせることで,細胞サイズリポソームへの膜タンパク質の自発的な組み込みに成功した.この細胞モデルは,コネキシンを発現している細胞との間に直接的な物質交換チャネルを形成しうることが明らかとなった。

P-39

光照射による発光バクテリアの発光制御

○大塚 隆之、佐々木 聰(東京工科大学バイオニクス学部)

 発光バクテリアの発光反応においては、酸素や還元型フラビンモノヌクレオチドや長鎖アルデヒドが基質として使われる。この反応の際、還元型フラビンモノヌクレオチドはルシフェラーゼ酵素と複合体を形成し励起状態から基底状態へ遷移することで光を放つ。本研究では、シャーレ上に形成された発光バクテリアのコロニーに光を照射した。その後、光を照射したコロニーを観察し、発光の変化について評価した。

P-40

発光バクテリアにおける、栄養成分の違いによる発光リズムの変化

○佐藤 雄一、佐々木 聰(東京工科大学)

 生命の基本単位である細胞は一定の分裂周期で分裂する。バクテリアの分裂周期は、環境により影響を受ける。本研究では、培地成分が発光バクテリアの発光強度へ及ぼす影響を調べた。その結果、培地中のyeast extractの量を変化させると、発光強度のピークの回数が変化することを確認した。発光強度は菌体数に依存しているので、特定の栄養下では、分裂周期の同調が起きるのではないかと考えられる。

P-41

化学反応コンパイラ「React」によるFas誘導アポトーシス経路の動態解析

○岡崎 紀明、淺野 良治、木下 崇司、中馬 寛(徳島大院薬)

 本研究では、独自に開発した化学反応コンパイラ「React」を用い、Fas誘導アポトーシスパスウェイの数理解析を行った。共通出発物質caspase8の初期濃度によるtype I/type II経路切り替えは、活性型caspase8および活性型caspase9によるcaspase3に対する基質競合により制御されることがわかった。また、caspase9初期濃度の高い条件下では、活性型caspase8生成速度の飽和により経路切り替えが抑制されることを明らかにした。

P-42

匂い学習によるチャコウラナメクジ嗅覚系の活動パターン変化

○平井 芳朗、渡辺 哲士、斎藤 稔(日大院総合基礎科学)

 本研究では、チャコウラナメクジの嗅覚系(前脳)において、ニンジンやキュウリの匂いに対する集合電位波形の変化を細胞外電位記録によって測定した。その結果、匂いの違いによって前脳の集合電位波形は異なった応答パターンを示した。また、チャコウラナメクジに匂い嫌悪学習を行い、学習前後において匂いに対する前脳の応答パターンを調べた結果、学習前に見られた応答パターンが、学習後には複雑で特徴的なパターンに変化した。

P-43

ケナフの成長記録

○阿部 裕太、本田 数博(神奈川工科大工)

 ケナフは一年草であるが、その生長速度の速さから、二酸化炭素を多く吸収する、地球温暖化の抑制に役立つ植物として、また新規な紙原料として利用することによる森林資源の保護の観点から注目されている。同時に、生物多様性の観点から日本固有の種ではないケナフの帰化危険性のリスクも問題視されている。我々はケナフを実際に育て、その生態について観察した。成長の速度、成長段階におけるケナフ葉の先端部の分岐現象、分岐した葉の空間分布について報告する。また、マメ科の植物で多く見られる就眠運動がアオイ科の植物であるケナフでも確認できたので、動画像およびその画像解析から葉運動の角度の時間変化を解析した。

P-44

真正粘菌の成長に伴って形成する管のネットワーク構造解析

○伊藤 昌明、高松 敦子(早大理工)

 真正粘菌は多核単細胞生物である。真正粘菌が成長していく際、管状の構造を形成し、その中を原形質流動することで物質輸送を行っている。また環境によって形成する管の形状が異なることが分かっている。この研究では、複雑ネットワーク理論の観点から、管の形状のみに注目し、粘菌が好む環境と嫌う環境という二つの条件下で成長するに伴ってどのようなネットワーク構造を形成していくのか、ということについて考察していきたい。

P-45

脊椎動物体節形成の結合振動子モデル

○印口淳史、高松敦子、根本英明(早大理工)

 脊椎動物の体節形成には,発生過程での遺伝子の時空間パターン形成が大きな役割を担っていると考えられる。体節形成期の未分節中胚葉(PSM)において,周期的に振動する分子も多く報告され,時間的に振動する分子反応モデルも提案されている。本研究では,時間的な周期性から空間パターンへの変換メカニズムの解明を目指し,PSM領域の各細胞を1振動子とした結合振動子系を考え,その性質について数理モデルを用いて調べる。

P-46

輸送機能のあるネットワークの解析 -真正粘菌ネットワークを例として-

○高松 敦子、伊藤 昌明(早大理工)

 近年、複雑ネットワークが有機的な機能を持つものとして注目されている。生物システムは常に状態変動しネットワーク自体も変化する。また、リンク有り無しのネットワークの「形」だけを見ていたのでは、生物の機能にどのような有利な点があるのか知ることは難しい。この研究では、生物が、ネットワークを利用して栄養物などの「輸送」していることに着目し、リンクについて結合強度と時間遅れを考慮したネットワークについて考察していきたい。特に、真正粘菌変形体を例として実験データを交えた議論を行う。

P-47

リポソーム内に閉じ込めたアセチルコリンエステラーゼの振動反応

○秀島 武敏、島崎 育巳(千葉大理)

 前回リポソームに閉じ込めたカタラーゼの振動反応について報告したが、今回はアセチルコリンエステラーゼを閉じこめた時の振動反応行った。リポソームがないときに比べ、振動反応が起こりやすいことがわかった。さらにアセチルコリンレセプターを加えたときの結果も報告する。

P-48

DNAの折り畳み構造変化による遺伝子活性スイッチングのモデル

○武仲能子(京大院理)

 遺伝子活性のon/offスイッチングは、特定の塩基配列と制御因子間での、特異的な相互作用ネットワークにより制御されていると理解されている。しかしこのモデルは、細胞空間内での種々の因子の数ゆらぎ効果により、ロバストなスイッチングが不安定になるという根本的な問題を含んでいる。そこで本研究では、遺伝子活性のon/offスイッチングに長鎖DNAの折り畳み構造転移を取り入れた新たな数理モデルを提案する。

P-49

群体形成効果を考慮した「アオコ」異常発生の数理モデル

〇芹沢 浩、雨宮 隆、伊藤 公紀(横浜国大環境情報)

 日本も含む世界中の多くの淡水湖が栄養塩の流入による「アオコ」の異常発生に悩まされている。「アオコ」を形成するMicrocystisなどの藻類は群体を形成して動物プランクトンによる捕食を免れ、通常の食物網から外れて存在する。これが「アオコ」の繁殖が継続する原因であると考えられている。本発表では群体形成効果を考慮した数理モデルを作成し、「アオコ」異常発生のメカニズムを説明する。

P-50

湖沼生態系数理モデルの解析とマイクロコズムの動態から見る生態系の安定性

○榎本 隆寿1、雨宮 隆1、伊藤 公紀1、板山 朋聡2、田中 信幸2、稲森 悠平2(横浜国大院環境情報1、国立環境研究所2

 自然生態系は様々なな生物と相互作用が存在しており、生態系は管理・予測し難い複雑な挙動を示す。従って有毒アオコの異常増殖が深刻な問題となっている湖沼生態系の改善には、生態系の安定化機構や変動機構の解明が重要である。そこで本研究は、水圏生態系数理モデルの解析による生態系の安定性と状態変化の検討、及び実験室モデル生態系(マイクロコズム)によるアオコの分解実験との比較を行い生態系の安定性について考察した。

P-51

生態系の多重安定性と生態環境問題

○雨宮 隆、Axel G. Rossberg、伊藤 公紀(横浜国大院環境情報)

 生態系で見られる多重安定性について紹介する。生態系に多重安定性が内在すると,環境因子が変化した時に,生態系に急激な状態変化が起こる可能性がある。環境因子を分岐パラメータと捉えることで,生態環境問題を分岐現象として考える。文献紹介と数理モデル解析から,非線形現象としての生態環境の劣化と修復について考察する。

P-52

非線形と皮膚

○中田 聡1、傳田 光洋2、北畑 裕之3、森 義仁4(奈良教大1、資生堂2、京大院理3、お茶女大4

 皮膚は外界からの刺激やエネルギーの流出入を制御できる機能性の高い開放的な境界である。これらの機能の仕組みを理解するためにどのようなモデル実験系を設計すればよいか、という課題に取り組んでいる。具体的には、皮膚が何故一定の厚みを維持できるのか?ということを「湯葉」を用いた実験を行った結果を報告する。

P-53

非線形と科学振興

○中田 聡1、朝倉 浩一2、森 義仁3、北畑 裕之4、櫻井 建成5、小出 和美6、原田 新一郎7(奈良教大1、慶大理工2、お茶女大理3、京大院理4、千葉大理5、磐田南高6、浦和東高7

 BZ反応など時空間発展する現象について、中学校から高等学校において題材とされるケースが多いが、相談する研究者が不在の場合や研究者が個別に相談している場合が多いように感じられる。そこで、個々最近の事例を集約して、非線形の研究者のネットワークを形成するなど、若い世代を喚起する機会をこの研究会で討論できればと思います。ぜひともこんな事例があるということも教えていただきたいと思います。

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水中に形成される空気薄膜の挙動 -AntibubbleとAntidomeの場合-

○新井田 恵美1、濱田 恵1、藤島 美樹1、原田 新一郎1、小平 將裕2(浦和東高1、日本宇宙フォーラム2

 界面活性剤が添加された溶液界面に同液滴を落下させることで特徴的な空気薄膜を形成できる。ひとつは水中に形成される球殻状のAntibubbleであり、もうひとつは気水界面直下に形成される半球殻状のAntidomeである。どちらも膜厚はμmオーダーであり、通常前者は30-60秒程度、後者は2秒以下で崩壊する。両者の形成・崩壊・長時間維持方法・分割方法について実験的に調査したので報告する。当日演示も行う。

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擬二次元寒天ゲル中の銅金属葉の成長

○小室真理子,神長真実,鹿志村美希,小室里花,鈴木絵里香(水戸第二高)

   高校化学の教科書や資料集に載っている金属樹のフラクタル成長について研究した。寒天中に成長させると黄褐色沈殿が発生した。空気から遮断するために寒天表面をラップで覆うことにより、黄褐色沈殿の生成を著しく減少させることができた。寒天培地の厚さを薄くすることで,平面的な銅金属葉を成長させることができた。金属葉のフラクタル次元についても解析を行った。


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