緒明佑哉

緒明佑哉 博士(工学)
慶應義塾大学 理工学部
応用化学科 准教授

略歴
最近の研究内容
これまでの研究内容
研究室を目指す3年生へ
主要論文
受賞歴
担当科目
学会活動等

略歴

学歴
2002 年 3 月 慶應義塾大学 理工学部 応用化学科 卒業
2004 年 3 月 慶應義塾大学 大学院理工学研究科 総合デザイン工学専攻 修士課程修了
2006 年 3 月 同 後期博士課程修了、博士(工学)

職歴
2005年4月~2006年3月 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2006年4月~2007年3月 日本学術振興会特別研究員(PDへ資格変更)
                 慶應義塾大学理工学部 応用化学科[今井宏明研究室]
2007年4月~2009年3月 日本学術振興会特別研究員(PD新規採択)
                 東京大学大学院工学系研究科 化学生命工学専攻[加藤隆史研究室]
2009年4月~2012年3月 慶應義塾大学 理工学部 応用化学科 助教
2012年4月~2016年3月 慶應義塾大学 理工学部 応用化学科 専任講師
2016年4月~         慶應義塾大学 理工学部 応用化学科 准教授


最近の研究内容

【概要】結晶を活用して有機・無機高分子材料をつくる

 バイオミネラルの構造や形成プロセスにならう水溶液中での結晶成長制御の手法・考え方・得られた材料を応用し、有機・無機の高分子材料の成長・形態制御およびそれによる機能開拓に興味を持って研究を進めています。一般に、有機材料や高分子材料では、精密な「分子設計」と「合成」によって、ナノメートルスケールでの分子やその集合体の構造制御と機能発現が盛んに研究されています。本研究では、これまでの無機結晶の成長制御において得られた手法・材料・知見を活用し、分子設計とは異なるアプローチにより有機材料・高分子材料の構造とかたちの設計・作製と機能開拓を目指しています(図参照)。すなわち、分子よりも大きなスケールの、分子の集合構造やナノ~マクロなスケールにおける形態を制御することで、材料の特性の向上や機能開拓を目指しています。特に、合成と形態制御を同時に行うことが容易ではない有機および無機高分子材料について、ナノからマクロスケールにわたる構造や形態を階層的に制御することで発現する新機能や特性の向上を探索しています。

 具体的には、有機高分子材料としてπ共役骨格を有する導電性高分子材料などを、無機高分子材料として遷移金属酸化物を原子層1層レベルまで薄くした酸化物モノレイヤーを中心として扱い、結晶と高分子、有機と無機の融合した新しい材料の作製を目指しています。これらを応用することで、構造やかたちを制御するからこそ実現する、蓄電デバイス、センサー、光機能材料、刺激応答性材料、吸着剤などの性能向上やこれまでに無い機能の発現を目指しています。具体的なこれまでの成果をいくつか示したいと思います。


[関連解説記事]
(1) 化学と工業, 2016, 69-3, 200 (平成27年度 日本化学会進歩賞受賞業績紹介).
(2) 「層状結晶からつくる有機・無機高分子材料と機能開拓」、自己組織化マテリアルのフロンティア(編集代表:中西尚志、フロンティア出版、2015年12月出版)」分担執筆、第6章


(1) 結晶の「すき間」「表面」「構造」を活用した高分子・有機材料の作製

 これまでは、「高分子を用いた結晶の成長制御」を研究してきましたが、発想を転換し、「結晶を用いた高分子の成長制御」ができないかに近年取り組んでいます。結晶のすき間、表面、構造そのものを有効に活用することで、高分子の成長制御を行う新しい手法を開拓してきました。

[関連論文]
 J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 8594.
 J. Mater. Chem. 2012, 22, 21195.
 J. Mater. Chem. 2012, 22, 22686.
 Chem. Eur. J. 2013, 19, 2284.
 Langmuir 2014, 30, 3236.
 Chem. Commun. 2014, 50, 11840.
 Polym. J. 2014
 Nanoscale 2015, 7, 3466.
 Bull. Chem. Soc. Jpn. 2015, 88, 1459.
 Chem. Commun. 2015, 51, 7919.
 Chem. Commun. 2015, 51, 9698.
 Chem. Mater. 2015, 27, 2627.
 Chem. Lett. 2016, in press.
 Adv. Funct. Mater. 2016, in press.


(1-1) 結晶のすき間を活用
 ナノ結晶のすき間を活用することで、結晶の持つかたちを高分子材料にナノ~マクロスケールにわたって転写することができます。例えば、ナノ結晶から構成されたバイオミネラルのナノ空間においてヘテロ芳香族モノマーの導入と重合を行うことで、もとの階層的な形態を写し取ったような有機高分子の階層構造体を得ることができます。この階層構造制御の手法は、様々な高分子材料をはじめ、有機分子からなる結晶や無機高分子にも適用可能であり、もとの階層構造を転写したからこそ実現する特性の向上が可能となりました。例えば、得られた導電性高分子の階層構造を利用することで蓄電デバイスとして優れた電気化学特性を示し、汎用的なポリスチレンの階層構造体は疎水性吸着剤として優れた特性を示します。これらの特性の向上は、ナノメートルスケールの高比表面積構造とマイクロメートルスケールの構造による物質の拡散経路の確保を両方実現できたためと考えられます。このような設計指針により、吸着剤、電極、触媒などの特性が向上できることを示しています。このような異なるスケールでの形態(階層構造)制御を、様々な機能材料の作製へ応用しています。




(1-2) 結晶の表面の活用
 酸化剤結晶の表面を活用することで、高分子材料に複雑な形態を付与する技術を見出しました。一般に、ピロールやチオフェンなどの導電性高分子は、溶液中などで酸化重合によって合成されます。均一な液相中で重合が進行するため、重合と同時に形態を制御し、任意の形態を得ることは容易ではありません。そこで、結晶の表面を活用することで重合と同時に形態制御を行う2つの新しい手法を開拓しました。  1つ目の手法として、ある種の酸化剤結晶の固体表面にヘテロ芳香族モノマーの蒸気を供給すると、モノマー蒸気と酸化剤の反応によって活性なモノマー蒸気が生成することがわかりました。この活性化されたモノマー蒸気が反応容器内の任意の基材に吸着することで重合の開始点となり、様々な基板・基材上で重合が進むことがわかりました。この手法により任意の基板・基材・テンプレート上に導電性高分子を得ることが可能となりました。例えば、本手法を応用することで、リチウムイオン二次電池電極活物質であるチタン酸リチウムに導電性コーティングを施すことで、充放電特性が改善できることがわかりました。  2つ目の手法として、酸化剤結晶では、モノマー蒸気の供給に伴って固体表面上に導電性高分子の生成を確認することができます。固体表面では、酸化剤が凝縮相から高密度かつ迅速に表面に吸着したモノマーに対して供給されるため、ナノ粒子およびそれらが連なったような膜が得られました。さらに、酸化剤結晶の形態をマイクロメートルスケールのスポンジ状多孔質にしておくことで、表面で得られる導電性高分子に階層構造を付与することが可能となりました。本手法は、様々なモノマーや結晶の組合せに適用可能であり、新しい重合と形態制御を同時に行う手法として期待されます。本手法を応用することで、階層構造を付与したポリピロールの方がレドックスキャパシタとして優れた容量を有することがわかりました。  これらの手法をさらに発展させると、導電性高分子の階層構造体にさらに酸化還元能を有する有機低分子を複合化することができ、より高容量な蓄電デバイスの作製に成功しています。




(1-3) 結晶の構造の活用
 結晶成長の知見を活かし、形態や配向性が制御されたモノマー結晶をそのまま高分子に変換できないか、ということから本研究を始めました。ジアセチレン化合物の結晶では、ジアセチレン分子間の距離がおよそ0.5 nm以下ならば、結晶構造を変えることなく重合(トポケミカル重合)が進むことが知られています。このようなジアセチレン化合物について、結晶形態や配向の制御を行った後に重合を行うことで、形態と配向性が制御されたポリジアセチレンを得ることができます。このジアセチレンモノマー結晶の形態制御をするにあたり、魚の体表の結晶成長制御にヒントを得ました。ある種の魚の体表は、有機結晶のグアニンと細胞質の積層構造によって銀色の光沢を生み出しています。魚の表皮では、板状形態のグアニン結晶は結晶方位をそろえて並んでいます。無機結晶の成長制御に関するこれまでの知見を応用し、溶媒・基板・添加分子を変化させることで、同様に有機結晶の成長制御が可能であることを見出してきました。これらの検討結果より、ジアセチレン化合物等の結晶形態・配向性を制御することができました。トポケミカル重合の後に得られたポリジアセチレン結晶は、有機電界効果トランジスタの半導体活性層として応用することが可能でした。  ポリジアセチレンは、外部刺激に応答してポリジアセチレン主鎖がねじれることで色変化を起こすことが知られています。もし、このねじれやすさやねじれの程度を制御することができれば、刺激への応答性や可逆性を制御できるのではないかと考えました。本研究で用いたペンタコサジイイン酸を重合して得られるポリジアセチレンの結晶構造に着目すると、層状の結晶構造を有しています。後述する層状無機化合物の知見を活かし、この結晶構造中に金属イオンをインターカレーションすることを試みました。これにより、金属イオンによって層状の結晶構造の安定性を変化させることができ、熱や機械的刺激に応答する色変化挙動についてその色、応答性、可逆性を制御することができました。これまでの刺激応答性材料では、相転移を活用する場合が多く、転移点付近で急峻に色変化が起こるものが多く報告されています。一方、本研究は、色、応答性、可逆性などを金属イオンのインターカレーションによって精密に制御できる新しい技術と言えます。


(2) 結晶のはく離による無機高分子材料の作製~モノレイヤーのサイズ・表面修飾制御~
 無機層状化合物をはく離させ、単層シート(モノレイヤー)を合成する研究が盛んに行われています。先行研究の多くは、物質群の拡充と新機能の発現に焦点があてられてきました。モノレイヤーは無機高分子と捉えられることも多くありますが、高分子としては「サイズ(分子量)」「分散性(溶解性)」「表面化学種(官能基)」の制御が十分に検討されていませんでした。一方、ナノ粒子ではこれらを制御する技術は既に十分確立されており、これによりナノ粒子の応用の可能性は大きく広がっていると言えます。そこで、モノレイヤーでもこのような制御が実現できないかと考え、研究をはじめました。これまでの結晶成長制御技術を応用することで、はく離を行う層状化合物の構造や形態を制御し、「サイズ・分散性・表面修飾」が制御されたモノレイヤーの合成と機能開拓を目指しています。

 [関連論文]
 Adv. Funct. Mater. 2010, 20, 4127.
 Chem. Eur. J. 2012, 18, 2825.
 J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 4501.
 Chem. Mater. 2014, 26, 3579.
 Chem. Commun. 2015, 51, 10046.
 Phys. Chem. Chem. Phys. 2015, 17, 32498.



(2-1) 横幅サイズ制御
 一般的なモノレイヤーの作製方法では、主に水系媒質中でかさ高いイオンを層間に導入することで、水系媒質へ分散するモノレイヤーを得ています。このとき、母体となる層状化合物とはく離によって得られるモノレイヤーの横幅サイズについてはあまり注目が集まってきませんでした。多くの場合、はく離と同時に側面方向にも破砕されることで、横幅サイズも減少しています。この横幅サイズを制御、具体的にはシングルナノサイズでそろえられないかと考え、研究を始めました。無機高分子のサイズ(分子量)制御は、母体となる層状化合物の横幅サイズを小さくすることで行いました。この層状化合物ナノ結晶をはく離することで、究極に小さいモノレイヤーの作製を行いました。これは、モノレイヤーかつナノドットと位置づけられ、「モノレイヤーナノドット」と呼んでいます。これまでの結晶成長制御の手法を応用することで、2~5 nm程度の層状化合物のナノ結晶を作製することができました。この層状化合物ナノ結晶のはく離を行うことで、実際にモノレイヤーナノドットを得ることができました。このような究極に小さくて薄い構造は、厚さと横幅サイズ双方のナノサイズ化に伴う強い量子サイズ効果によって、大きなバンドギャップエネルギーの拡大を観察することができました。具体的には、酸化チタンと酸化タングステンのモノレイヤーナノドットで、それぞれ0.66 eVと1.00 eVのバンドギャップエネルギーの拡大が観察されました。このような変化によって、価電子帯上端および伝導帯下端準位が大きく変化することで、これまで実現できなかった準位における触媒反応などへの応用が期待できます。



(2-2) 分散性の制御
 一般的なモノレイヤーの作製方法では、主に水系媒質中でかさ高いイオンを層間に導入することで、水系媒質へ分散するモノレイヤーを得ています。また、得られたモノレイヤーは表面に電荷を帯びたコロイド状態で分散しています。よって、水系媒質もしくは極性有機媒質への分散が一般的であります。もし、酸化物モノレイヤーの表面を疎水性にすることができれば、非極性有機媒質への分散が可能となり、様々な有機合成反応の触媒としての利用が期待できます。無機高分子の分散性(溶解性)制御は、層間にアルキルアミンなどの疎水性の分子を導入し、層間を疎水化した化合物を前駆体として用いることで行いました。この層状有機無機複合前駆体を、トルエンなどの非極性有機媒質中に分散させると、分散媒が疎水性層間に浸透できるため層間の相互作用を断ち切ってはく離させることが可能となりました。これによって、非極性有機媒質に分散するモノレイヤーの作製が可能となりました。  実際に得られた疎水性の酸化マンガンモノレイヤーを、トルエン中での触媒反応に用いました。例えば、酸化マンガンはベンジル位やアリル位のアルコールを選択的にアルデヒドに酸化する触媒として知られています。本研究で得られた疎水性酸化マンガンモノレイヤーを触媒として用いることで、疎水性かつ高い比表面積に由来した高い触媒活性が得られることがわかりました。この活性向上は、モノレイヤー表面の疎水性による分散性の向上とはく離に伴う比表面積の向上が寄与しているものと考えられます。本知見は、層状化合物の層表面を様々な分子で修飾しておくことで、任意の有機媒質中に分散可能なモノレイヤーを得ることが可能であることを示唆しています。



(2-3) 表面修飾
 一般的なモノレイヤーの作製方法では、主に水系媒質中でかさ高いイオンを層間に導入することで、水系媒質へ分散するモノレイヤーを得ています。また、得られたモノレイヤーは表面に電荷を帯びたコロイド状態で分散しています。よって、任意の官能基で修飾することは容易ではありません。分散性制御の知見を応用することで、層表面およびモノレイヤー表面に様々な化学種を表面修飾する技術の確立を目指しています。本研究グループでは3つの新しい層表面修飾の方法を提案しています。1つ目は、層状化合物の層間に予め所望の官能基を有する有機化合物をインターカレーションしておき、それを適当な有機媒質中に分散させる方法、2つ目は、層間に予めビニル基を有する化合物をインターカレーションしておき、それをはく離させることやそのビニル基を起点に新たな分子による修飾を行う方法、3つ目は、アルキル鎖で表面修飾したモノレイヤーを非極性有機媒質中に分散させておき、そのアルキル鎖を異なる修飾分子へ置換する方法です。このような新しい表面修飾方法の開拓により、様々な機能化を目指しています。例えば、チタン酸モノレイヤーにカテコール誘導体を修飾することで、修飾有機分子からチタン酸モノレイヤーへの電子遷移に基づく可視光吸収がおこります。本来、モノレイヤー化することで量子サイズ効果によってバンドギャップが広がってしまうため、その変化した準位を利用した光触媒反応のためにはより短波長の光が必要となります。有機分子修飾による可視光吸収を利用し、これらの反応を起こせるようになります。また、表面のビニル基を活用することで、モノレイヤーと光機能性高分子が結びついたような構造を作製でき、特異な光化学特性を観察することができました。



(3) 革新的な機能材料創製を目指して
 結晶および結晶成長に関する知見を最大限に活用することで、優れた機能を有する新しい有機・無機高分子材料を作りたいと思います。新しい材料は、分野融合型の研究から生まれてくるのではないかと思います。これまでの結晶と高分子や有機と無機の垣根を取り払い、分子設計とは異なるアプローチによってどのように「かたち」「構造」を階層的に制御すれば高機能につながるのかを追求したいと思います。


これまでの研究内容

生物の構造にヒントを得た材料合成
これまでの成果1: バイオミネラルの見過ごされていたナノ構造の発見
 貝殻や歯・骨などは、ありふれた原料から温和な水溶液プロセスによって作製され、ナノメートルからマクロスケールにわたり精密に制御された階層構造を有する有機無機複合体です。バイオミネラルそのものに関して、結晶形態や含まれている生体高分子などについて、これまでにも数多くの解析・研究が行われてきました。また、これらにならい、無機結晶と有機高分子の複合体を合成する試みも盛んに研究がなされてきました。これまでの研究において、バイオミネラルは単結晶か多結晶であるか、1960年代から世界中で長く議論が続いていました。2000年代に入ると、単結晶であることを示唆する報告が多くを占めるようになってきました。しかし、中学・高校の教科書にあるような多面体で囲まれた単結晶を思い浮かべて下さい。なぜ単結晶にもかかわらず曲面を持つ複雑な形態を有するのか、単結晶であるとすればどこに有機高分子が複合しているのか、なぜ単結晶が着色しているのかなどの疑問がわいてくるかと思います。そこで、実際に種々のバイオミネラルの構造を解析すると、いずれもナノ結晶から構成された階層構造体であることが明らかになりました。つまり、生物はナノ結晶を構成単位として様々なマクロスケールの形を作り上げていると考えられます。バイオミネラルの見過ごされていたナノ構造を世界に先駆けて発見したということができます。


[代表論文]
 Angew. Chem.Int. Ed. 2005, 44, 6571.
 Adv. Funct. Mater. 2006, 16, 1633.
 Small 2006, 2, 66.

[代表解説記事]
 SPR Nanoscience Vol. 1:Nanostructures through Chemistry (Ed. By Paul O’Brien), pp. 1-28, The Royal Society of Chemistry (2013).


これまでの成果2:多様なバイオミネラルにならう有機分子を用いた無機結晶の成長制御
 バイオミネラルの構造や形成プロセスに着想を得て、様々な無機結晶の形態制御や有機無機複合体の作製を行いました。有機分子や高分子を制御分子として添加することで、結晶形態の制御、ナノからマクロスケールにわたる形態制御を行ってきました。有機高分子を用いた成長制御によって、バイオミネラルのようにナノ結晶から構成された階層構造を有する様々な材料を合成することができました。このような、ナノ結晶の集積によって構成される材料は、大きな単結晶と異なり比表面積が高く、優れた触媒特性、電気化学特性を有していることが明らかとなりました。さらに、これらのナノ結晶の間には空間が存在し、この空間を活用して新しい材料を合成することが可能となりました。さらに、多様なバイオミネラルという点で、炭酸カルシウム以外のバイオミネラルにも着目してきました。例えば、鉄やマンガン酸化細菌の合成プロセスにならうことで、遷移金属酸化物の温和な条件下での合成や形態制御が可能となりました。


 [関連論文]
 Adv. Funct. Mater. 2005, 15, 1407. [Selected for Cover Picture]
 Chem. Commun. 2005, 6011.
 Angew. Chem.Int. Ed. 2007, 46, 4951.
 Adv. Mater. 2008, 20, 3633.
 J. Mater. Chem. 2008, 18, 4140.
 Adv. Funct. Mater. 2010, 20, 4127.
 Adv. Funct. Mater. 2010, 20, 4279.
 Chem. Eur. J. 2012, 18, 110. [Selected for Cover Picture]
 Chem. Eur. J. 2013, 19, 4419.
 Chem. Eur. J. 2013, 19, 2284.

 [代表解説記事]
 “常温の水溶液でナノ材料をつくる”,Newton 2012年, 1月号 (積水化学自然に学ぶものづくり事例紹介広告に掲載).
 “多様なバイオミネラルに材料合成をならう”,化学と工業 2011, 64-9, 707 (特集記事・飛翔する若手研究者).


研究室を目指す3年生・大学院生へ

 分子設計と合成とは異なる手法で材料の機能開拓を行いたい人、有機や無機といった垣根を越えて機能材料を創りたい人、色々なかたちの材料を作ってみたい人、一緒に研究しませんか?  近年、材料の世界において無機と有機で分類することに大きな意味は無くなって来たように思います。材料を化学することの本質は、原子・分子や結晶のナノからマクロスケールにわたる集合状態・構造を制御し、機能につなげることであると思っています。有機・無機、結晶・高分子の垣根を越えて、新しい機能材料を創り出してみたい人を歓迎しています。一般的な、分子や高分子の合成とは異なり、ナノからマクロスケールにおけるかたちの制御による機能材料の創製を目指します。研究は日本・世界的な競争でもあり、学会や論文を通じた発表により国際的な競争を行うことになります。その中で、日本・世界で新しくおもしろい研究をしてみたい人を歓迎しています。


主要論文
[代表的な原著論文]

(35) Mamoru Okaniwa, *Yuya Oaki, Hiroaki Imai, “Intercalation-Induced Tunable Stimuli-Responsive Color-Change Properties of Crystalline Organic Layered Compound” Advanced Functional Materials 2016, in press.

(34) Kosuke Sato, *Yuya Oaki, Hiroaki Imai, “Incorporation of Redox-Active Guest in Conductive and Redox-Active Host: Hierarchically Structured Composite of a Conductive Polymer and Quinone Derivative” Chemistry Letters 2016, 45, 324.

(33) Masashi Honda, *Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “Surface-functionalized monolayered nanodots of a transition metal oxide and their properties” Physical Chemistry Chemical Physics 2015, 17, 32498.

(32) Mamoru Okaniwa, *Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “Morphology and Orientation Control of Organic Crystals in Organic Media through Advanced Biomimetic Approach” Bulletin of the Chemical Society of Japan 2015, 88, 1459.

(31) Masashi Honda, *Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “Hydrophobic monolayered nanoflakes of tungsten oxide: Coupled exfoliation and fracture in a nonpolar organic medium”Chemical Communications 2015, 51, 10046.

(30) Kento Kuwabara, *Yuya Oaki, Ryo Muramatsu, *Hiroaki Imai, “Crystal-surface-induced simultaneous synthesis and hierarchical morphogenesis of conductive polymers”Chemical Communications 2015, 51, 9698.

(29) Mamoru Okaniwa, *Yuya Oaki, Soichiro Kaneko, Kazuki Ishida, Hideyuki Maki, *Hiroaki Imai, “Advanced Biomimetic Approach for Crystal Growth in Nonaqueous Media: Morphology and Orientation Control of Pentacosadiynoic Acid and Applications” Chemistry of Materials 2015, 27, 2627.

(28) Kosuke Sato, *Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “A Hydrophobic Adsorbent Based on Hierarchical Porous Polymers Derived from Morphologies of a Biomineral” Chemical Communications 2015, 51, 7919.

(27) Kosuke Sato, *Yuya Oaki, Daisuke Takahashi, Kazunobu Toshima, *Hiroaki Imai, “Hierarchical CaCO3 Chromatography: A Stationary Phase Based on Biominerals”, Chemistry–A European Journal 2015, 21, 5034.

(26) Yurika Munekawa, *Yuya Oaki, Kosuke Sato and *Hiroaki Imai, “Incorporation of Organic Crystals in the Interspace of Oriented Nanocrystals: Morphologies and Properties”, Nanoscale 2015, 7, 3466. [Selected for Cover Picture]

(25) Ryo Muramatsu, *Yuya Oaki, Kento Kuwabara, Kosei Hayashi, *Hiroaki Imai, “Solvent-free synthesis, coating and morphogenesis of conductive polymer materials through spontaneous generation of the activated monomers” Chemical Communications 2014, 50, 11840.

(24) Masashi Honda, *Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “Hydrophobic Inorganic-Organic Composite Nanosheets Based on Monolayers of Transition Metal Oxides” Chemistry of Materials 2014, 26, 3579.

(23) Yurika Munekawa, *Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “An Experimental Study on the Processes of Hierarchical Morphology Replication by Means of a Mesocrystal: A Case Study of poly(3,4-ethylenedioxythiophene)” Langmuir 2014, 30, 3236.

(22) Tatsuya Ikeda, *Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “Thin Film Consisting of CuO Mesocrystal Nanosheets: An Application of Microbial-Mineralization-Inspired Approaches to Thin-Film Formation” Chemistry–An Asian Journal 2013, 8, 2064.

(21)*Yuya Oaki, Tatsuya Ikeda, Hiroaki Imai, “A Microbial-Mineralization-Inspired Approach for Systematic Syntheses of Copper Oxides with Controlled Morphologies in an Aqueous Solution at Room Temperature” Bulletin of the Chemical Society of Japan 2013, 86, 821. [Selected Paper]

(20) Naoki Yagita, *Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “A Microbial-Mineralization Approach for Syntheses of Iron Oxides with a High Specific Surface Area” Chemistry–A European Journal 2013, 19, 4419.

(19) Keisuke Nakamura, *Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “Monolayered Nanodots of Transition Metal Oxides” Journal of the American Chemical Society 2013, 135, 4501.

(18) Misako Kijima, *Yuya Oaki, Yurika Munekawa, *Hiroaki Imai, “Synthesis and Morphogenesis of Organic and Inorganic Polymers by Means of Biominerals and Biomimetic Materials” Chemistry–A European Journal 2013, 19, 2284. [Selected for the Picture on Backcover]

(17) *Yuya Oakii, Takahiro Oki, *Hiroaki Imai, “Enhanced photoconductive properties on a simple composite coaxial nanostructure of zinc oxide and polypyrrole” Journal of Materials Chemistry 2012, 22, 21195.

(16) *Yuya Oaki, Naoki Yagita, *Hiroaki Imai, “One-Pot Aqueous Solution Syntheses of Iron Oxides Nanostructures with Controlled Crystal Phases through a Microbial-Mineralization-Inspired Approach” Chemistry–A European Journal 2012, 18, 110. [Selected for Cover Picture]

(15) *Yuya Oaki, Keisuke Nakamura, *Hiroaki Imai, “Homogeneous and Disordered Assembly of Densely-Packed Titanium-Oxides Nanocrystals: An Approach to Coupled Synthesis and Assembly in an Aqueous Solution” Chemistry–A European Journal 2012, 18, 2825. [Selected for Cover Picture]

(14) *Yuya Oaki, Misako Kijima, *Hiroaki Imai, “Synthesis and Morphogenesis of Organic Polymer Materials with Hierarchical Structures in Biominerals” Journal of the American Chemical Society 2011, 133, 8594.

(13) Yuya Oaki, Hiroyuki Ohno, *Takashi Kato, “Nanosegregated Composites of an Imidazolium Salt and a Layered Inorganic Compound: Organization of Both Anions and Cations in Interlayer Space” Nanoscale 2010, 2, 2362.

(12) *Yuya Oaki, Takeo Anzai, *Hiroaki Imai, “Homogeneous and Disordered Assembly of Densely-Packed Nanocrystals” Advanced Functional Materials 2010, 20, 4127.

(11) Manabu Oba, Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “A Microbial-Mineralization-Inspired Approach for Synthesis of Manganese Oxide Nanostructures with Controlled Oxidation States and Morphologies” Advanced Functional Materials 2010, 20, 4279.

(10) Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “Photochemical Reactions in Nanoscopic Organic Domains Generated from Oriented Crystals with Polymers: Nanocrystalline Mosaics as a New Family of Host Materials” Bulletin of the Chemical Society of Japan 2009, 82, 613.

(9) Yuya Oaki, Satoshi Kajiyama, Tatsuya Nishimura, Hiroaki Imai, *Takashi Kato, “Nanosegregated Amorphous Composites of Calcium Carbonate and an Organic Polymer” Advanced Materials 2008, 20, 3633.

(8) Yuya Oaki, Satoshi Kajiyama, Tatsuya Nishimura, *Takashi Kato, “Selective Synthesis and Thin-Film Formation of alpha-Cobalt Hydroxide through an Approach Inspired by Biomineralization” Journal of Materials Chemistry 2008, 18, 4140.

(7) Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “One-Pot Synthesis of Manganese Oxide Nanosheets in an Aqueous Solution: Chelation-Mediated Parallel Control of Reaction and Morphology” Angewandte Chemie International Edition 2007, 46, 4951.

(6) Yuya Oaki, Akiko Kotachi, Takashi Miura, *Hiroaki Imai, “Bridged-Nanocrystals in Biominerals and Its Mimetics: Classical Yet Modern Crystal Growth in Nanoscale” Advanced Functional Materials 2006, 16, 1633.

(5) Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “Hierarchically Organized Architecture of Potassium Hydrogen Phthalate and Poly(Acrylic Acid): Toward A General Strategy for Biomimetic Crystal Design” Chemical Communications 2005, 6011.

(4) Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “Nanoengineering in Echinoderms: Emergence of Morphology from Nanobricks” Small 2006, 2, 66.

(3) Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “Hierarchically Organized Superstructure Emerging from Exquisite Association of Inorganic Crystals, Organic Polymers, and Dyes: A Model Approach toward Suprabiomineral Material” Advanced Functional Materials 2005, 15, 1407. [Selected for Cover Picture]

(2) Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, “The Hierarchical Architecture of Nacre and Its Mimetic Material”, Angewandte Chemie International Edition 2005, 44, 6571.

(1) Yuya Oaki, *Hiroaki Imai, ‘‘Amplification of Chirality from Molecules into Morphology of Crystals through Molecular Recognition’’ Journal of the American Chemical Society 2004, 126, 9271.


[代表的な解説記事・著書]

(4) 「層状結晶からつくる有機・無機高分子材料と機能開拓」、自己組織化マテリアルのフロンティア(編集代表:中西尚志、フロンティア出版、2015年12月出版)」分担執筆、第6章

(3) 緒明佑哉,“常温の水溶液でナノ材料をつくる”
Newton 2012年, 1月号 (積水化学自然に学ぶものづくり事例紹介広告に掲載).

(2) 緒明佑哉, “多様なバイオミネラルに材料合成をならう”
化学と工業 2011, 64-9, 707 (特集記事・飛翔する若手研究者).

(1)Yuya Oaki, Hiroaki Imai, “Recent Advances in Mesocrystals and Their Related Structures”
Nanoscience Volume 1:Nanostructures through Chemistry, Ed. By Paul O’Brien, pp. 1-28, The Royal Society of Chemistry (2013). [解説記事]


受賞歴

(10) 平成27年度(第65回)日本化学会進歩賞(2016年3月)

(9) 積水化学 自然に学ぶものづくり 研究助成プログラム 奨励賞(2010年9月)

(8) 第19回日本MRS学術シンポジウム 奨励賞(2009年12月)

(7) 日本化学会 第3回関東支部大会 優秀講演賞(2009年9月)

(6) The IUMRS International Conference in Asia 2008講演奨励賞(2008年12月)

(5) 第17回日本MRS学術シンポジウム 奨励賞(2006年12月)

(4) 日本セラミックス協会第19回秋季シンポジウム ポスター賞(2006年9月)

(3) 慶應義塾大学大学院・理工学研究科・総合デザイン工学専攻 優秀研究活動賞受賞(2006年3月)

(2) 第16回日本MRS学術シンポジウム 奨励賞(2005年12月)

(1) E-MRS (European Materials Research Society), Young Scientist Award at E-MRS Spring Meeting 2005(2005年 5月)


担当科目

学部設置科目
 
理工学基礎実験(理工学部2年春・火曜3~4限)
 応用化学計算基礎(応化2年秋・木曜2限)
 マテリアル合成(応化3年秋・月曜5限)
 応用化学実験C(応化3年秋・火曜3~5限)
大学院設置科目
 マテリアル合成の化学(春・木曜3限、旧科目名:マテリアルプロセシング)
 機能デザイン工学(秋・月曜2限)


 理工学基礎実験(理工学部2年春・火曜3~4限)
 C-3 pHと電離平衡のテーマを担当します。理工学部卒業生として必要最低限な化学実験の知識と技術を身に着けて下さい。そのための具体的なテーマとして、中和滴定の実験を行い、濃度の表し方、酸解離定数の計算、指示薬の化学変化に対する理解を深めてほしいと思います。必ず予習をしてきて下さい。
(1)実験操作では、「どこを精密に行う必要があるのか?」をよく考えて下さい。
 たとえば、およそ100 mL測ればよいところ、共洗いまで必要で正確な濃度にすべきところ、それぞれの場面に応じて考えてください。
(2)必ず実験を行いながら、滴定曲線のプロットを作成し、変化のある部分のプロットを特に細かく取って下さい。データーの取り扱いについて考えて下さい。
 近年、様々な機器がデジタル化・自動化されていますが、実験データーの取得、処理、解釈に関する最終的な責任はあくまで人にあります。ここでは基礎的な技術の習得が目的ですので、自分の手でどのようにデーターの取得、処理、解釈を行えばよいかをよく考えて下さい。考察に「手書きグラフであるので精度が低い」のみで終始している記述が多数見受けられます。では、データーを表計算ソフトに打ち込んで自動で曲線を描けばよいのでしょうか?データーの取り扱いについてよく考えて下さい。
(3)なぜ?を考えながら取り組んで下さい。
 実験書に沿って実験を進め、データーをまとめ、レポートで課題に取り組むことになります。レポートでは、「なぜこのようにするのか?」「どうしてそうなるのか?」を、単に実験誤差の議論のみに終始することなく、原理まで戻って深く考えてほしいと思います。また、困ったら実験誤差のせいにするのではなく、誤差に言及するのであれば定量的に議論してほしいと思います。

 
応用化学計算基礎(応化2年秋・木曜2限)
 化学の研究を進めていく上で、あるいはその先仕事をしていくために、化学の知識と実験スキル以外に必要なことは何でしょうか?1つの答えとして、「日本語」「英語」「コンピュータ」を自在に操ることができ、さらにそれをもとに他人が納得する資料の作成あるいはプレゼンテーションができることです。そのための基礎を身に着けます。表計算ソフトでのグラフの作成やデーター処理、プレゼンテーションソフトの扱い方の基礎を学びます。私やTA、あるいは友人に聞いたり相談したりしても構いませんので、必要な操作ができるようになってもらいたいと思います。
また、講義中に出る課題(F, G組共通)について、各自で復習をしながら実際に手を動かして身に着けてください。可能な限り添削をして返却します。コピーレポートに関しては、理工学部の方針に従って対処します。

 
マテリアル合成((応化3年秋・月曜5限)
 マテリアル合成は、原子・分子レベルからどのようにその集合構造を設計・合成するのかということを扱います。化学者はマテリアルを原子・分子レベルから理解しながら設計・合成・活用することができます。これまで、原子や分子の構造、性質、反応性等に関する知識として、無機化学、有機化学、反応速度や熱力学を含めた物理化学等を勉強してきました。実際にみなさんの生活を支えているマテリアルは、原子や分子1個ではなくそれが集まった固体材料です。例えば、携帯機器の電池の電極にはコバルト酸リチウムが活物質として使われていますが、1分子として使われているわけではなく、結晶粒子として使われています。ペットボトルもポリエチレンテレフタレートでできていますが、1分子の高分子として使われているのではなく固体材料として使われています。すなわち、原子・分子から構成される集合構造を考えねばなりません。本講義は、どのように化学反応や原子・分子レベルから固体材料が作られていくのかについて、化学の観点から応化の卒業生として知ってほしい、マテリアル合成の基礎的な仕組みを楽しみながら俯瞰・理解することを目的とします。無機、有機、高分子などの素材に関係なく、原子・分子から材料への視点を重視して勉強していくようにしましょう。各回の講義内容はシラバスを参照して下さい。講義が終わる頃には、世の中の様々な材料が、いかに工夫された原子・分子の集合構造の制御によって成り立っているかについてわかってもらえればと思います。

 
応用化学実験C(応化3年秋・火曜3~5限)
 主に、C-5,8を担当します。関連のC-6,7に関してもわからないことがあれば聞いて下さい。 1・2年生の実験には無かった機能性無機材料の合成を行います。身近な無機材料として2種類のセラミックスの合成を扱います。残念なことに、高校の教科書に「材料」の内容は少なく、今まで材料合成ということがあまりピンとこなかったかもしれません(材料と化学の関係は上記の他の科目を参照して下さい)。応用化学科卒業生として、材料の合成とはどんなものなのか、セラミックス合成の一例を通じて体験してほしいと思います。特に、これまで化学式による反応のみを考えていた場合が多いように思いますが、実際に化学式で示される分子がどのように結晶構造を組み、それがさらに大きな粒子として結晶成長していくのかについてよく考えてほしいと思います。
(1)どのような化学反応・合成方法であるか?
(2)どのような分子・結晶構造の材料ができたのか?
(3)どのように結晶成長によって粒子が成長するのか?
について勉強してもらいたいと思います。
 また、X線を使う分析も体験します。X線は目に見えない、短い波長の電磁波です。電磁波というと、物理のように思うかもしれませんが、原子・分子の配列や状態をはじめ、X線の照射によって得られる化学に関連した情報は多岐にわたります。その中でも、今回C-8では、X線の回折を使った現象を例として取り上げ、作製した結晶の同定を行うことを学びます。

 
マテリアル合成の化学(大学院春・木曜3限)
 *2015年度より「マテリアル・プロセシング」から科目名を変更しました。
 学科科目「マテリアル合成」の発展・実践編に該当します。学科科目が基礎知識と導入編であったのに対し、本大学院科目においては、実際に材料をつくるプロセスを研究で行っている人を対象に、材料合成を化学的に制御するために必要となる知識および修士課程を卒業して材料が専門と言えるために必要な化学的な基礎知識、専門知識、最新知識を身に着けます。
 大学院設置科目ですが、化学系以外の学部から進学し、現在材料を扱っている履修者にも対応できるようにするため、学部内容の復習もおりまぜながら進めるようにしています。具体的には、固体材料(セラミックス、金属、高分子)の合成プロセスを化学的に制御するための知識において、大学院修了までに知っておいてほしい知識を身に着けることを目指します。各回の講義内容はシラバスを参照して下さい。

 
機能デザイン工学(大学院秋・月曜2限・1~2回分)
 有機無機複合材料は、有機成分と無機成分の互いの短所を補う、あるいは互いの長所を足し算・かけ算的に活かすことができる材料として注目されてきました。物質・材料の視野を広めつつ知識を深め、材料設計のセンスを高めてもらえるよう、複合の形式とスケールや得られた材料による特異な機能を意識しながら、有機無機複合材料の有名な先行研究例を解説します。


学会活動等

所属学会
 日本化学会
 日本セラミックス協会
 高分子学会

委員会活動等(継続中)
 日本化学会 教育・普及部門 化学だいすきクラブ小委員会 委員, 2010年4月~
 日本化学会 化学フェスタ実行委員会, 委員, 2013年1月~
 日本化学会 化工誌編集委員会, 委員, 2014年3月~

委員会活動等(任期終了)
 日本化学会
      教育・普及部門 化学グランプリ・オリンピック委員会 グランプリ小委員会, 委員, 2011年6月~2013年12月
 日本化学会
      年会実行委員会 会場総務小委員会, 委員, 2013年4月~ 2014年3月
 日本セラミックス協会
      行事企画委員会, 委員, 2012年9月~2015年3月
 高分子学会
        第64回高分子討論会, セッションオーガナイザー, 2015年9月

アウトリーチ活動等
 研究・化学のおもしろさを小・中・高校生に知ってもらい、将来1人でも多くの科学者が誕生してくれることを願った活動も行っております。
 実施例:
  ひらめき☆ときめきサイエンス(研究成果公開・普及事業)
  ケーキ☆サイエンス(川崎市・慶應義塾連携事業、木月小学校における出前授業)
  アカデミーキャンプ2011, 2012(少年キャンプにおける出前授業)
  マナビゲート2013(小中高生のための科学技術紹介事業)
  化学の日@鴎友学園(公益社団法人日本化学会、2015年化学の日イベント)