結晶成長   アパタイト   バイオミネラル   エネルギー材料  
ナノブロック   シリカ・量子ドット   低次元ナノ材料   有機結晶・高分子

研究背景

 水酸アパタイト(HAp、Ca10(PO4)6(OH)2)は歯や骨を構成する無機主成分である。特に高強度で知られる歯のエナメル質においては、ロッド状結晶が配向して密に集積している。この構造を人工的に再現することができれば、新規な生体材料や構造材料への展開が期待される。本グループでは、c軸配向HAp基板や、HAp結晶の特異面に吸着するペプチドを利用し、リン酸カルシウム過飽和溶液中でエナメル質類似構造を持つHApの作製を試みている。

Fig.1 HApの結晶構造

研究成果

 リン酸カルシウム過飽和溶液のpHや温度を変化させることで、結晶形態を制御したHApを配向HAp基板上に成長させることに成功した。特にpH 6.4では、XRDより基板と方位が同じc軸方向にロッド状結晶がエピタキシャル成長していたことから、エナメル質類似構造体の作製に成功した。
 また、mRNAディスプレイ法を用いることでNPPTRQTKPKRVANTNというアミノ酸配列を持つペプチドがHApのc面と強く相互作用することを見出した。このペプチドを共存させた過飽和溶液中では、c面が広く露出したままHApが成長する様子が確認された。
 これらの知見は、HAp結晶の高度な成長制御を可能とし、新たな生体材料合成への応用が期待される。



Fig.2 (a)エナメル質の構造、(b)研究アプローチ

Fig.3 ペプチドの有無によるHApの結晶成長への影響