結晶成長   アパタイト   バイオミネラル   エネルギー材料  
ナノブロック   シリカ・量子ドット   低次元ナノ材料   有機結晶・高分子


研究背景

 自然界では多くの生物がバイオミネラルを利用している。卵殻やウニトゲ、貝殻などは炭酸カルシウムを骨格として利用しており、ケイソウやイネの葉、カイロウドウケツなどはシリカを骨格として利用していることが広く知られている。
 炭酸カルシウム系のバイオミネラルは、多様な種において方位の揃ったナノユニットから構成される構造を持ち、これはメソクリスタル構造と呼ばれている。生物は炭酸カルシウムを成長させる際に、自ら分泌した生体分子を利用して、結晶成長を制御していると考えられているが、詳細な成長のメカニズムは理解が不十分である。
 一方で、人工の有機分子を利用し、炭酸カルシウムを水中で成長させることによって、バイオミネラル類似の結晶を作製する研究が広く行われおり、当研究室でも様々な有機分子を用いて、多様な多形および構造の炭酸カルシウムを成長させている。また詳細な観察をすることでそのメカニズムを考察している。
  常温常圧でのボトムアッププロセスによるバイオミネラルの形成機構は、低環境負荷での機能性材料作製という次世代に向けた材料作製技術の手本となる。


研究成果

 炭酸カルシウム系バイオミネラルにおいては、当研究室で様々な水溶性有機分子を用いて、炭酸カルシウムを合成することにより、バイオミネラル類似構造体が作製されている。
 カルサイトの結晶成長では、有機分子によってカルサイトの逐次的な分岐成長によって、メソクリスタル構造が作製されており、ナノ結晶の大きさ、有機物分布や格子歪みなどの特徴から、卵殻類似のメソクリスタルが成長している。
 アラゴナイトの場合は、有機分子を用いたエピタキシャル成長によって、ナノロッドやシート状のアラゴナイトが得られ、貝殻に見られる特徴的な交差板構造や真珠層に類似の結晶が成長している。
 バテライトの場合は球状のメソクリスタル構造が成長し、成長に利用した有機分子を温度応答性高分子に置換させることで、動的機能を持つバテライト球が作製されている。
 シリカ系バイオミネラルにおいては、ナノスケールの構造を相互に比較を行った結果、ケイソウの骨格がもっとも密で溶融シリカに近く、イネの葉に含まれるシリカであるプラントオパールは疎に充填された粒子の集合体であり、ガラスカイメンはその中間的な状態であるということが明らかになっている。