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青色光を緑色光へ変換するYAG:Ce3+ナノ蛍光体

YAG:Ce3+ナノ蛍光体のグリコサーマル合成
 イットリウムアルミニウムガーネットY3Al5O12(YAG)にCe3+をドープしたYAG:Ce3+蛍光体は、青色光によって励起され、黄緑色光を発します。この蛍光体は、青色発光ダイオードと組み合わせて、白色固体照明として実用化されています。YAG:Ce3+蛍光体は原料を混合して焼成する固相法によって合成されていますが、当研究室はYAG:Ce3+ナノ粒子分散液を得るために、焼成を経ないグリコサーマル法という液相法を検討しました。同法では、1,4-ブタンジオール、酢酸イットリウム、酢酸セリウムおよびアルミニウムイソプロポキシドを耐圧容器へ投入し、300℃で処理しました。粉末試料は分散液を遠心分離、洗浄および乾燥して得ました。この試料に関して、電子顕微鏡写真から1次粒子径は約10nmであること、粉末X線回折パターンから単相のYAGが得られることがわかりました。

YAG:Ce3+ナノ蛍光体の特徴
 ミクロンサイズのバルク粒子では(400)のXRDピークは2θ=29.77°に位置するのに対し、ナノ粒子では2θ=29.55°に観測されました。これは、(400)から求めた立方晶の格子定数がナノサイズ化によって12.004Åから12.091Åへ増大したことを示しています。一般に、表面原子は配位数の不足を補うように原子位置を変位することが知られています。ナノサイズ化すると、単位体積あたりの表面原子の割合が増加するので、ナノ粒子では表面近傍で構造緩和が顕著になり、格子定数が増大するものと考えられます。さらに、27Al固体NMRの測定から、ナノサイズ化により6配位Alに対する4配位Alの割合が少なくなることがわかっています。この配位数の変化は、上述の構造緩和と関連があるものと推察されます。

 ナノサイズ化によって、励起スペクトルはブルーシフトし、かつ、ブロードになったのに対し、蛍光スペクトルはそれほど変化しません。YAG :Ce3+ナノ粒子においては、上述のように原子間距離が伸びるためにCe3+周囲の結晶場強度が低下します。また、表面の割合が多いナノ粒子では、Ce3+に隣接する酸化物イオンの配位数や配位の対称性が多様になると考えられます。この結果、Ce3+の5d軌道が種々の高いエネルギー準位へ分裂し、励起スペクトルがブルーシフトし、ブロードになるものと推察されます。

 YAG:Ce3+ナノ粒子分散液を静置した後、洗浄と遠心分離によって透明なペースト状試料を得ることができます。ペースト状試料から見た目に透明な膜を作製し、膜の後方から励起光を入射し、膜の前方から蛍光を測定しました。この評価の結果、蛍光強度は膜厚に比例して増加しました。これに対し、バルク粒子が分散した膜は見た目に不透明であり、蛍光強度は膜厚に対して頭打ちになりました。これらの結果より、透明なナノ蛍光体分散膜では粒子による後方散乱による光損失が低減できることが実証されました。このような特性を生かしてYAG:Ce3+ナノ蛍光体が発光デバイスへ応用されることが期待されます。

YAG:Lnナノ蛍光体のバイオイメージングへの応用
 当研究室では、生体組織に対して透過性の高い近赤外光に着目し、また、YAG:Ce3+ナノ蛍光体の研究を基盤として、近赤外光で励起でき、近赤外光を発するYAG:Yb3+ナノ蛍光体の開発に取り組んでいます。YAG:Yb3+ナノ蛍光体はYb3+2F7/22F5/2遷移により近赤外領域に吸収を示し、波長940nmによる近赤外光励起によってYb3+2F5/22F7/2遷移による近赤外蛍光を示します。YAG:Yb3+ナノ蛍光体については生体分子イメージングへの応用が期待されます。

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Last Update : 11/09/16