最 近 の 研 究 成 果


こちらのページでは,当研究室の最近の研究成果についてご紹介いたします。

ジアリールヨードニウム塩を基質としたN-アルコキシインドリンおよびインドールの合成

    側鎖にヒドロキシルアミンを有するジアリールヨードニウム塩から、合成が困難なN-アルコキシインドリンが得られることを見出しました。また、ヒドロキシルアミンに結合した官能基を変更することでインドールへの誘導も行いました。さらに一連の反応機構について詳細な解析も行いました。


1) Shibata, K.; Ogura, A.; Takao, K.
     J. Org. Chem. 2021, 86, 10067-10087. (Selected Paper)

赤色光を用いたBarton-McCombie反応の開発

    私達は赤色光と光触媒としてクロロフィルaを用いたBarton-McCombie反応を開発しました。本反応は有毒な試薬を使用すること無く、温和で安全な条件にて達成されました。


1) Ogura, A.; Ichii, N.; Shibata, K.; Takao, K.
     Bull. Chem. Soc. Jpn. 2020, 93, 936-941. (Selected Paper)

(−)-カロフィコ酸A三環性骨格の立体選択的合成

    カロフィコ酸Aは、フィジーのヘラルド水路付近にて採取された紅藻 Callophycus serratus の抽出液より見出された天然有機化合物です。同天然物はジテルペンと安息香酸のハイブリッド化合物であり、臭素化された三環性骨格中に第四級不斉炭素を含む三連続不斉中心を有します。私たちは、新規アリルホウ素試薬を用いたアリルホウ素化反応による第四級不斉炭素の立体選択的構築と、ラジカル環化やパラジウム触媒による還元的環化によるシクロヘキサン環形成を経て、カロフィコ酸 A の核となる三環性骨格の立体選択的合成を達成しました。


1) Sakama, A.; Kameshima, R.; Motohashi, Y.; Sumida, W.; Unno, Y.; Yoshida, K.; Ogura, A.;
  Takao, K.
     J. Org. Chem. 2020, 85, 3245.

(+)-アクアトリドの全合成

    アクアトリドはビシクロ[2.1.1]ヘキサン骨格を特徴とした特異な四環性骨格を有するセスキテルペノイドです。私たちは、開環/閉環メタセシス反応および生合成仮説を模倣した渡環[2+2]光環化付加反応を駆使し、本天然物の効率的な合成を達成するとともに、当初提唱されていた構造への誘導も可能としました。


1) Takao, K.; Kai, H.; Yamada, A.; Fukushima, Y.; Komatsu, D.; Ogura, A.; Yoshida, K.

     Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58, 9851.

(−)-ミスラミンの不斉全合成

    ミスラミンはケシ科の植物より単離されたアルカロイドで、特異な五環性骨格を有しています。私たちは有機分子触媒を用いるエナンチオ選択的分子内Friedel−Crafts型1,4-付加反応を鍵として、本天然物の初の不斉全合成を達成しました。


1) Yoshida, K.; Fujino, Y.; Takamatsu, Y.; Matsui, K.; Ogura, A.; Fukami, Y.; Kitagaki, S.; Takao, K.
     Org. Lett. 2018, 20, 5044.

(±)-クラビラクトンDの全合成および構造訂正

    私達はシクロブテンの骨格変換を伴う開環/閉環メタセシス反応(ROM/RCM)を鍵として、(±)-クラビラクトンDの初の全合成を達成し、提唱されていた構造を訂正しました。


1) Takao, K.; Nemoto, R.; Mori, K.; Namba, A.; Yoshida, K.; Ogura, A.
     Chem. Eur. J. 2017, 23, 3828.

2) Takao, K.; Mori, K.; Kasuga, K.; Nanamiya, R.; Namba, A.; Fukushima, Y.;
    Nemoto, R.; Mogi, T.; Yasui, H.: Ogura, A.; Yoshida, K.; Tadano, K.
     J. Org. Chem. 2018, 83, 7060.

ピリジンN-オキシド触媒によるオキシラン誘導体の開環に伴う位置選択的クロロシリル化反応

    私達はピリジンN-オキシド誘導体を触媒に用いて、嵩高いシリル化剤によるオキシラン誘導体の位置選択的クロロシリル化反応を開発しました。それをカルベジロールの合成に応用しました。


1) Yoshida, K.; Suzuki, H.; Inoue, H.; Matsui, K.; Fujino, Y.; Kanoko, Y.; Itatsu, Y.; Takao, K.
     Adv. Synth. Catal. 2016, 358, 1886-1891.

有機分子触媒を用いたエナンチオ選択的なスピロインダン骨格の構築

    生物活性化合物の構造中にしばしば見られるスピロインダン骨格のエナンチオ選択的な構築法として,シンコナアルカロイド由来のアミン触媒を用いた分子内Friedel-Crafts型1,4-付加反応を開発しました。それを(-)-カンナビスピレノンAおよびBの形式合成に応用しました。


1) Yoshida, K.; Itatsu, Y.; Fijino, Y.; Inoue, H.; Takao, K. Angew. Chem. Int. Ed.
     2016, 55, 6734-6738.

(+)-シトスポロリド A の全合成

    (+)-シトスポロリドAは複雑な五環性骨格を有し,その構造は(-)-フスコアトロールAと(+)-CJ-12,373とのヘテロDiels-Alder反応により生合成されていることが提唱されています。この生合成を模倣した反応を鍵として,本天然物の初の全合成を達成しました。


1) Takao, K.; Noguchi, S.; Sakamoto, S.; Kimura, M.; Yoshida, K.; Tadano, K. J. Am. Chem. Soc.
     2015, 137, 15971.

(+)-ビブサニン A の全合成

    亜鉛を用いたBarbier型アリル化反応により不斉四級炭素 を立体選択的に構築し,分子内野崎-檜山-岸反応と光延反応を組み合わせて(+)-ビブサニンAが有する特異な11員環骨格を効率よく構築し,本天然物の初の全合成を達成しました。


1) Takao, K.; Tsunoda, K.; Kurisu, T.; Sakama, A.; Nishimura, Y.; Yoshida, K.; Tadano, K.
     Org. Lett. 2015, 17, 756.
2) Akihiro, S.; Nishimura, Y.; Motohashi, Y.; Yoshida, K.; Takao, K. Tetrahedron 2016
     72, 5465-5471.

ピリジン N-オキシドを触媒に用いたアルコールのシリル化反応

    私達はピリジン N-オキシド誘導体を触媒に用いることにより,TBDPS基などの嵩高いシリル基による第二級アルコールのシリル化反応,MS4Aを用いたアミンフリーの条件によるシリル化反応を開発しました。


1) Yoshida, K.; Takao, K. Tetrahedron Lett. 2014, 55, 6861.
2) Yoshida, K.; Fujino, Y.; Itatsu, Y.; Inoue, Y.; Kanoko, K.; Takao, K. Tetrahedron Lett. 2016
     57, 627.

(+)-クラビラクトン A および (–)-クラビラクトン B の全合成

    クラビラクトン類は,キノコから単離された新しいタイプのチロシンキナーゼ阻害剤です。私達は,シクロブテンの骨格変換を伴う開環/閉環メタセシス反応を鍵として,(+)-クラビラクトン A および (–)-クラビラクトン B の全合成を達成しました。


1) Takao, K.; Nanamiya, R.; Fukushima, Y.; Namba, A.; Yoshida, K.; Tadano, K. Org. Lett.
     2013, 15, 5582.

(+)-バクチオールの全合成

    不斉四級炭素は天然物の構造中に多く見出されていますが,その立体選択的な構築はしばしば困難を伴うことが知られています。私達は新規な不斉四級炭素構築法として,Oppolzer のカンファースルタムを用いた不斉 Claisen 転位反応を開発しました。それを(+)-バクチオールの全合成に応用しました。


1) Takao, K.; Sakamoto, S.; Touati, M. A.; Kusakawa, Y.; Tadano, K. Molecules 2012, 17, 13330.