3. 酸性雨問題研究会

  【設立目的】
 我が国の大気汚染状況は、大都市において依然として窒素酸化物濃度は高く、 雨のpHも低いまま推移し、大気汚染物質の輸送移動により酸性雨の地域はむしろ拡大する傾向 にある。更に、中国等の東アジア諸国の工業化と経済発展に伴い、これらの地域で発生した大 気汚染物質が偏西風により日本へ長距離輸送され、欧米で見られた様な越境大気汚染による酸 性雨の問題が我が国においても引き起こされることが現実問題となってきた。
 そこで、この様な地球規模の環境問題となってきた酸性雨に関して 1)酸性雨の発生源・生 成機構の解明、2)酸性雨による生態系、人間社会に及ぼす影響、3)酸性雨問題に対する対策、 等について総合的な研究・検討を行い、一般市民を含めた研究者間の交流・情報交換を行う事を 目的として、10名の研究者を発起人として、1993年8月に、日本化学会の研究組織として酸性雨問題 研究会が設立された。


【研究組織】
                      
研究会世話人代表者  田中 茂  慶應義塾大学理工学部教授
研究会世話人
  安部 喜也  元 東京農工大学農学部教授
  井川 学  神奈川大学工学部教授
  坂本 和彦  埼玉県環境科学国際センター
  鶴田 治雄  東京大学大気海洋研究所
  土器屋 由紀子  元 江戸川大学教授
  橋本 芳一  慶應義塾大学名誉教授
  原 宏   東京農工大学農学部教授
  村野 健太郎  法政大学生命科学部教授
  (五十音順、2012年1月現在)


【活動】
 一般市民を含めて酸性雨問題の理解を深めるために、毎回テーマを決めて、 酸性雨に関する講演会を世話人により企画し、原則として、6月、11月の年2回酸性雨問題研 究会シンポジウムを開催している。1993年12月に第1回の酸性雨問題研究会シンポジウムを 開始してから、既に39回の酸性雨問題研究会シンポジウムを開催した。

【酸性雨問題研究会シンポジウム案内】
第40回酸性雨問題研究会シンポジウムを2014年3月15日(土)に開催する予定です。 参加申込の詳細は、第40回酸性雨問題研究会シンポジウムの案内を参照のこと。

【出版】
 酸性雨問題研究会シンポジウムの各回の講演内容をまとめ、以下に示す本を出版した。
 ※“身近な地球環境問題−酸性雨を考える”日本化学会・酸性雨問題研究会
   コロナ社、1997年10月発行(第1回〜5回酸性雨問題研究会シンポジウム)
 ※“(続)身近な地球環境問題−酸性雨を考える”日本化学会・酸性雨問題研究会
   コロナ社、2002年8月発行(第6回〜10回酸性雨問題研究会シンポジウム)


【首都圏における酸性雨のネットワーク観測】
  我が国の大気汚染状況は、首都圏において依然として窒素酸化物濃度は改善され ておらず、雨のpHも低く、汚染物質の輸送移動により酸性雨の地域はむしろ拡大する傾向にある。 この様な広域における酸性雨の発生源・機構を解明するには、まず首都圏に観測網を構築し降水中の 化学成分を連続的・長期的にモニタリングし、その実態を把握しなければならない。
 そこで、1990年度から、首都圏の教育機関、研究機関、民間企業の協力を得て、東京、 神奈川 千葉、埼玉、栃木の1都4県の首都圏9地点に自動降水採取装置を設置し、 一雨毎に降水を採取し、 その降水試料のpH、導電率、化学イオン成分の測定を継続的に行い、首都圏における酸性雨の実態 を明かにしてきた。
 (1990年6月から首都圏で開始された酸性雨のネットワーク観測のデータは、観測データの確定後原 則として公開しており、観測データの入手を希望する方は、酸性雨問題研究会の事務局へ連絡のこと)
 又、1990年6月から2002年5月の12年間に渡り継続して測定してきた首都圏での降水の観測結果をま とめた「首都圏における酸性雨のネットワーク観測」が慶應義塾大学出版会から2002年12月に出版された。


・TOPに戻る