嫌気性活性汚泥によるメタン醗酵プロセスの改良
現在、工業的な廃水処理は主に生物化学的に行われています。その代表的な方式として好気性活性汚泥によるものと、嫌気性汚泥による方法があります。好気性処理は曝気槽を用いて槽内を激しく攪拌できますが、嫌気性処理ではそれは困難です。本研究室では効率のよい嫌気的廃水処理槽の開発を行っています。


Xanthomonas campestrisによる増粘剤の生産
Xanthomonas campestrisはマヨネーズやドレッシングなどへの増粘剤や添加剤として広く食品工業で用いられています。その生産性は培養条件にもおおきく依存しますので、さまざまなパラメータについて検討を行っています。

降伏応力をもつ非ニュートン性プロダクトを生産する塔型バイオリアクターの開発
Development of Bioreaction Tower for Bioproducts Having Yield Stress
 近年環境への工業生産物の滞留による汚染が危惧されており、その問題解決手段として微生物により生産・分解されるバイオポリマーの利用研究が進展しています。その中でも本研究室ではXanthan Gumに注目しています。Xanthanは糖質を原料として好気性微生物による液体発酵により生産される多糖類で、増粘剤、乳化安定剤あるいは保水剤としての用途が知られています。 XanthanGumの好気性発酵プロセス設計においてこれまで障壁となってきたのは培養液の粘性とくに降伏応力です。降伏応力があると液中に供給したガス気泡のうち小さいものは浮力のみでは浮上できず永久に液中に蓄積されてしまいます。長時間滞留した気泡中の酸素は液中溶存酸素と平衡に達し、有効な酸素源では無くなってしまいます。また液中への酸素供給速度を向上するために大きな攪拌エネルギーを液に投入してもインペラーから少し離れると液は澱み、インペラー近傍では菌体の破損が生じます。ところが本研究室では比較的小さい径の気泡塔を降伏応力をもつ高粘度非ニュートン流体に適用すると、生成したスラグ気泡の上昇により塔壁面付近の液までよく混合することを見いだしました。それ故、気泡塔型バイオリアクターは培養液中のXanthan濃度が上昇し高粘性となり降伏応力をもった後も菌体に酸素を供給できると予想され、高濃度・高粘度まで生産を継続することができると考えています。

マルチガスチャンネルをもつソフトマテリアル製造法の開発
Development of Soft Material with Multi-Gas Channels  
やわらかい材質に多数のガス(または液)の流通路を作るとこれまでに無い新しい機能が現れてきます。その用途は食品、バイオテクノロジー、ポリマーをはじめいろいろな分野で利用できる可能性を持っています。

光触媒固液流動層を用いた殺菌技術の開発
食品飲料の原料水、病院など医療機関で使用する水、温泉など付加価値のある水のリサイクル、家庭用の水道水などに含まれている菌の中には有害なものもあり、除去する必要が出てきます。しかしながら加熱殺菌などが難しい場合には紫外線殺菌あるいは光触媒を利用した殺菌が可能になると非常に有用です。


せん断液流動場における気泡生成
Bubble Formation from a Nozzle in Shear Liquid Flow
 近年、石油化学工業製品の高機能・高付加価値化が求められた結果、従来はその取り扱い難さから避けられがちだったポリマー等の高粘性液と気体との反応も試みられるようになってきています。高粘性液中に気体を導入する際、バブリングだけでは気液接触面積を十分にとることが難しいため通気攪拌型反応器を用いられることが一般的です。このような反応装置では、攪拌羽根付近の液相で生じる大きな剪断応力により気泡はより小さく分断されます。しかしながら、その最適な装置設計は困難です。例えば高粘度液中に存在する気泡が小さすぎると、反応性は良いですが反応終了後も液相内に滞留し続け有効な液容積が減少してしまいます。一方、気泡容積が大きすぎると液相からの離脱は容易ですが反応効率が低下します。
このように反応器の反応や物質移動性能に密接に関係する気泡の表面積、動的挙動および物質移動係数を予測したりコントロールするには、まず気泡の大きさや形状が非常に重要となりますが、攪拌羽根近傍の気液2相の流れ挙動が複雑なため未だ経験則や実機規模の実験に頼った設計が行われているのが現状です。しかしながら本研究室ではすでに高粘性静止液相中あるいは垂直上向き並流流れ中で生成する気泡の大きさや挙動を予測する理論モデルを開発し、実測値とのよい一致を得ています。これらの基盤研究成果をさらに剪断流動場に拡張することにより、攪拌羽根付近の最も単純な流動様式である剪断流れ場での気泡生成挙動および気泡内のガスの液相への移動速度を予測できる理論モデルの開発を進めています。高粘性液−ガス系反応器の精密設計を可能にすることにより、高付加価値化学製品の製造技術開発に貢献することができます。 (特許出願中

液中を上昇中の気泡の形状・速度・表面積のレーザーによる3次元On-Line計測
3D On-line Measurement of Shape, Velocity and Interface area of Rising Single Bubble
 気泡塔内を上昇する気泡の挙動を正確に捉えることは、気泡塔の設計のために重要ですが、非常に多くの因子によって気泡形状と上昇速度は変化するので推定が困難です。そこで本研究室では3セットのレーザーセンサーを用い、液中を上昇する気泡の上昇速度、形状および表面積を瞬時に測定できるシステムを開発しました。これにより、球形から変形した形状の気泡であってもその表面積を実測できるため、誤差を含んだ実験式や計算に手間のかかるCFDを用いずに値を得ることができます。また、実測した気泡の形状はデジタル化されていますので、簡単に解析したり、CFDの計算空間に置くことも容易です。
 この技術を応用すると正確な気泡形状をもとにして液の物性も推定できます。関心のある方は下記までお問い合わせください。(特許出願中)

慶応知的資産センター


循環流動層内の気固流動と圧力分布
Gas-Solid Fluidization and Pressure Profile in Circulating Fluidized Bed
循環流動層はその熱的制御の容易さからFCCプロセスや石炭燃焼ボイラーとして利用されていますが、さらに触媒気相反応器としての応用も試みられるようになってました。例えば、炭化水素の塩素化反応では、従来の固定床を用いた触媒反応器を用いる方法が一般的ですが、近年循環流動層を用いる製造方法が提案されています。
 従来、固定床型反応器では炭化水素化合物と酸素(空気)との混合による爆発範囲を避けるために、大過剰な空気を反応器に供給しなければりません。その結果、排ガス中には製品塩素化炭化水素の他に塩素を含む余剰空気が大量に発生し、その処理のためにダイオキシン副生を防ぐための大規模な設備が必要となっています。しかし、この反応を触媒による塩素化反応部と、触媒再生部とに分離し、循環流動層型触媒反応プロセスを用いれば、炭化水素と酸素とが直接接触することが無いため、過剰空気率を低減させ、排ガスを減らすことができます。


降伏応力をもつ非ニュートン液中での気泡生成
Bubble Formation in Viscous non-Newtonian Liquids Having Yield Stress
「降伏応力をもつ非ニュートン液」とは、剪断応力を徐々に加えていってもある特定の応力までは流れ出さない性質をもつ液体のことです。こうした液体は工業的には「ペンキなどの塗料」や「ドレッシングやプリンなどの増粘剤」として有用です。例えば、ペンキを壁に塗る際には刷毛で素早く塗る(降伏応力より大きい応力)ときは、軽く滑らかにペンキは壁に付着し、塗ったあともしも液だれが重力によって落ちそうなとき(降伏応力以下の応力)は、降伏応力によって液が流れ出さないような優れた塗料になります。またドレッシングなども瓶からサラダにかけるとき(大きい剪断応力)は、スムーズに流れ出し、野菜に和えたドレッシングは自重(小さな剪断応力)では滑り落ちないようにできます。
こうした機能性の優れた液体は最近菌体を用いた気泡塔型バイオリアクターで製造することが試みられていますが、降伏応力があるために、適切な大きさの気泡を吹き込まないと、気泡が液中で動けなくなったり、反応効率が悪くなったりします。そこで本研究では、ガス分散器から発生する気泡の大きさを精密に制御し、予め予測することができる気泡生成モデルの開発を行っています。


2次元での気泡生成
Visualization of Gas Flow in Two-dimensional Bubble
気泡の生成のメカニズムを実験的に明らかにするためには、気泡の外側の液体の流れの様子を調べるだけでは不十分です。気泡内部の気体の運動の様子を観察することが必要となります。そこで、気泡の吹き込む空気中に線香煙を可視化トレーサーとして混入させ、気泡のレーザースリット光を照射することにより気泡内部の渦の観察に成功しました。ノズルから出た気体は気泡の中心部を上向きに流れ、気泡の表面を伝わって下降し、再び中心を上昇する流れにのって対流しています。

水中へのアンモニア混合ガス気泡の溶解・反応吸収メカニズムの解明
Mechanism of Gas Absorption and Reaction from NH3 Gas Bubble Formation in Water
ガスを液体中に吸収させる操作は、工業的に非常に多く見られます。とくにアンモニアガスは水に対して非常によく溶けるため、その現象を観察することが困難です。そこで高速度ビデオカメラを用いることによりアンモニアガスが気泡となって水中に生成しつつ溶解していく様子をよく観察することができました。この実験をもとに気液間での反応吸収を明らかにし理論的にもこの現象をよくシミュレーションできるモデルを開発しています。亜硫酸ガスもまたアンモニアと同様に水に対して非常によく溶けます。さらに環境問題でもその除去技術が大変重要です。亜硫酸ガスが気泡となって水中に生成しつつ溶解していく様子の観察より、気液間での反応吸収を明らかにし理論的にもこの現象をよくシミュレーションできるモデルを開発しています。

冷却水に導入された蒸気泡から直接接触凝縮を伴いながら液化する際の熱伝達係数の測定
Measurement of Heat Transfer Coefficient for Direct Contact Condensation
蒸気が冷却液と直接接触し、熱移動を伴いながら凝縮していくとき、その熱伝達係数は通常知られている熱伝達係数の値よりも非常に大きい値となります。これまで定常現象においてはほとんど無視されていましたがここで求めた、直接接触凝縮時の熱伝達係数は気液間で高速に凝縮が起こる現象をシミュレーションするとき非常に重要です。

冷却液相中におかれた単一ノズルから凝縮を伴いつつ生成する気液2相気泡の生成
Two-phase Bubble Formation from a Nozzle with Condensation
冷却液中に、その冷却液と混じり合わない物質を気化させた蒸気を吹き込むと、凝縮して液化しながら気泡として膨張します。膨張速度が液化速度より小さいと、この2相気泡は気泡として離脱していくことができません。このような現象には、蒸気のもつ熱が冷却液に奪われていく熱移動と気泡に新しい蒸気が供給されていく現象とが同時に起こっています。このような直接接触凝縮により、気液2相気泡をへて液滴となるメカニズムを明らかにする研究を行っています。このような系は直接接触式熱交換器で見られます。一方、気泡をノズルから均一に生成させる技術はすでにかなり進んでいますが、均一液滴生成を行う場合には精密な制御機器が必要になります。そこで一旦、気泡として液中に発生させた後、凝縮させることで均一な液滴を容易に作ることができます。
日本工業新聞平成12年(2000年)7月18日(火)記事


微小重力下での液相からの気泡の分離
Gas-Liquid Separation from Liquid Phase under Microgravity
気泡のノズルからの離脱を促進するために液を左から右向きに一様な速度分布になるように装置設計をして、まず地上重力下で気泡を発生させました。気泡は液の流れによって右上に押し流されつつ上昇していることが観察されます。

クリックするとビデオで見ることができます。
同じ装置を微小重力下において同様な実験を行いました。静止液の場合と異なり、気泡はノズル先端に留まることなく次々に離脱していきました。これは一つの気泡をノズル上で留まらせないための一つの手段です。このときの気泡の大きさは液物性や重力や操作条件によって変化します。それを物理的に明らかにしておく必要があります。
日本工業新聞平成12年(2000年)7月25日(火)記事

(旧化学工学研究室との共同研究)

微小重力下での液中での気泡生成
Bubble Formation in Liquid under Microgravity
3つの部屋ごとに水が入れられ、その中に上からガス吹き込みノズルが挿入されています。左のノズルから順にガス流量が大きく設定してあります。地上重力下では気泡はすぐに下向きのノズルから離脱して上昇していきます。このように気体を液体中から分離することは、浮力が存在するので非常に容易です。

クリックするとビデオを見ることができます。
一方、微小重力下ではこの実験範囲のガス流量では、ガス流量の大きさによらず気泡はノズルから離れずに大きくなりつづけました。少し前に離脱して上昇中だった気泡も止まってしまい、液中にただよっています。この現象は、気液接触器を設計するには不都合です。液中に留まった気体と液との反応や物質移動は時間とともに低下し、平衡に達します。すると溶液中での平衡気泡は反応に関与しない障害物になってしまいます。また、反応させるにしても単位容積あたりの気液接触面積が小さくなってしまいます。そこでこのような気泡を取り除いたり、大きさを小さくするような制御が微小重力空間では必要になるわけです。(旧化学工学研究室との共同研究)



非球形気泡生成モデルの開発とCFDによる反応器設計
Reactor Design by Non-Spherical Bubble Formation Model and CFD Simulators
 気泡塔をはじめとするほとんどの気液接触装置や反応器を設計する際には、気液接触面積を予め推定することができると、装置の規模や高さ・形状などを正確に決定することができます。ところがガス分散器やガス吹き込みノズルから気体を一定流量で液中に導入しても、ガスは圧縮性を持つことから一定流量で液中には入らず、断続的にしか入れることができません。それが「気泡」です。ガスがどのような周期で遮断されて気泡となって液中に分散されるのかを説明するメカニズムは複雑で、ガスの流量、ノズルの孔径、ノズル上流の空間の容積(蓄気室)、液物性、液の流動状態などによって変化します。
 しかしながら本研究室では気泡の大きさを決定する要因となる気泡がノズルから成長しつつ出ていく際の状態を、界面要素法を用いた2次元非球形気泡生成モデルを開発することにより精密に予測することを可能にしました。現在では、高圧下での気泡生成、無重量下での気泡生成、並流流れ場での気泡生成、熱移動や凝縮を伴う気泡生成、高粘度非ニュートン流体中での気泡生成など、様々な系でも的確に予測できるように拡張が行われています。それらのソフトウェアによるシミュレーション結果が正しく行われているかどうかの検討も重要な研究です。そこでいくつかの重要な実験条件について、高速度ビデオカメラによる画像解析や可視化実験などを行っています。
 また、最近では多くの数値流体力学計算を行うことができるソフトウェアも市販されてきており、それを利用した装置設計も行っています。