慶應義塾大学理工学部応用化学科 有機物質化学研究室 

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研究テーマ

生命現象は外部から取り込んだエネルギーを使い易い形に変換し,新陳代謝によって低エネルギー化することで営まれています。これは生命体が非平衡開放系であるために可能となります。
当研究室ではゲル・エマルション・ベシクルといったソフトマターと呼ばれる物質群を用いて,有機材料システムの開発や非平衡開放系における物理化学現象の解明を目的として研究に取り組んでいます。複雑な生命現象を材料機能へフィードバックすることで,生命現象を模倣した新しいコンセプトに基づく有機材料システムの構築を目指します。

具体的には,以下のようなテーマを研究対象としています。「散逸構造」についてより詳しく知りたい方はこちらもあわせてご覧ください。 

化粧品技術・表面技術

「平らな塗工表面を作製する」なんて難しくも何ともないと思っていませんか?では,本当にそうか実際に試してみましょう。 具体的には,「サンスクリーン剤性能評価法の開発ならびにその塗工時における性能変化の解析とその防止法の開発」,「 液膜塗工における自発的パターン形成を利用した光学材料の開発」を対象としています。

ホモキラリティー起源研究

なぜ天然のアミノ酸はL体のみ、糖はD体のみなのでしょう?これがわかると、医薬品、化粧品、食品、そして液晶材料の開発などにも有用です。具体的には,「自発的にホモキラリティーを発生させる化学反応系、結晶化系、液晶系の挙動解析と設計」,「ホモキラル脂質系とラセミ脂質系の物性比較による化学進化過程の解析」が研究対象です。

 

時空間パターン発生研究

生命体においては、バイオリズムと呼ばれる様々な時間的、空間的、時空間的パターンが発生します。では、人工的な化学系ではどうでしょうか?具体的には,「自発的に時空間パターンを発生させる化学反応系、結晶化系、液晶系の挙動解析と設計」ならびに「協同的な分子配向変化に基づくソフトマテリアルの空間制御」について研究しています。

機能性ジャイアントベシクルの開発

両親媒性分子(油にも水にも溶解する分子)が水中で自己集合することで形成する,マイクロメートルサイズの袋状人工膜(ジャイアントベシクル)はリアクターや輸送体,センサーなどの材料として注目されています。これの強度,安定性,サイズ,形状などを高度に制御するための技術を開発しています。

運動性をもつソフトマターの創製

通常,界面活性剤(例えばセッケン)水溶液中に油成分を加えると,油滴は容易に溶解します。しかし,ある特定の分子構造を有する油成分と界面活性剤の組み合わせでは,油滴は溶解せずに,水中を自発的に泳ぐ(自己駆動する)ことを見出しました。現在はこれの詳細なメカニズムを明らかにすると共に,運動の制御を行うことで,電場や磁場などの強力な外場を必要としない,新たな運搬体としての応用を目指しています。

ソフトマターの構造転移の誘導 

特定のpH環境や光が照射している状況でのみ,構造体が別の構造体へと転移し,全く別の機能を発現する――そのような構造体は,特定の条件をインプットして作動する新たな材料として有用と期待されます。私たちは,このような性質をもつ構造体を「化学的な知能をもつロボット」として新たな材料へとつなげる研究を推進しています。