3.レーザーアブレーションとICP-MS分析を組合せた大気粉塵中微量金属の測定

 人間活動により増大する大気粉塵は大気中に滞在し、地球環境問題に大きな影響を及ぼしている ことが近年指摘されている。大気粉塵中に存在する微量金属は人体に有害であり、我々の生活している各地域での 濃度レベルを把握することは非常に重要である。さらに、固有の発生源に特徴的である微量金属は発生源寄与を 推定する指標となる。そのために、微量金属濃度をモニタリングすることは大気粉塵の発生源を明らかにする上 で重要である。
 大気粉塵中の金属分析法としては蛍光X線分析法、放射化分析法が国設大気測定網(NASN)に組み込まれてき たが、蛍光X線分析法は対象元素が少なく、放射化分析法は原子炉の老朽化等の問題があり、新たな大気粉塵中 の金属分析法の開発が必要である。
 下図に示すレーザーアブレーション/誘導結合プラズマ質量分析(LA/ICP-MS)は、多種類の金属を同時 に、かつppt(10-12)という極微量濃度まで測定できる高感度な分析法であり、酸分解などの前処理を行うこと なく大気粉塵試料を直接分析装置へ導入し、20種類の金属を数分間で測定できる極めて有効な分析方法である。
 科学技術振興調整費・知的基盤推進整備事業「化学物質安全物性基盤の確立に関する研究」の一環として、 レーザーアブレーション/誘導結合プラズマ質量分析(LA/ICP-MS)法を用いて、下右図に示す様に、 日本周辺における海洋大気中の微量金属濃度の濃度レベルに関するデータを得ることができた。今後、 東アジアにおける大気汚染物質の日本への長距離輸送過程の解明に役立つばかりでなく、将来の東アジア地域 における大気汚染問題の日本への影響を評価する上での貴重な基礎データが得られた。
 又、本研究により、大気粉塵中微量金属の高感度分析方法であるLA/ICP-MS法の有効性が確認でき、 日本を通じて、 東アジアの国々において環境大気中の微量金属のモニタリング手法として普及すること が期待できる。




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