2.酸化チタン光触媒を用いた拡散スクラバー法による空気清浄技術の開発 

 下左図に示す様に、TiO2紫外光を照射すると、TiO2表面に電子(e-) と正孔(p+)が生じる。生じた電子と正孔は空気中の酸素(O2)、水(H2O)などと反応し、 OHラジカル、HO2ラジカルといった活性な酸化力もつラジカルがTiO2の表面に生成する。生成 したラジカルにより、NOx(NO、NO2)は、反応1,2により酸化されてニ酸化窒素(NO2)、更 に硝酸(HNO3)となる。酸化生成されたHNO3はTiO2やHAPに吸着し除去される。 更に、TiO2や HAPの表面に付着したNO2やHNO3は、水で簡単に洗い流し回収できるので、定期的に表面を水で 洗うことにより、半永久的に窒素酸化物を循環効率的に除去することができる。拡散スクラバー 法による大気中NOxの除去原理を下右図に示す。TiO2/HAPをコーティングしたステンレス板の隙間に空気を流すと、拡散係数の大きいNOxは壁面へ拡散する。壁面へ到達したNOxは、TiO2により生じ たHO2、OHラジカルによりNO2、HNO3に酸化され、TiO2 /HAPの表面に吸着、除去される。一方、拡散 係数の小さい粒子は壁面へ拡散しない内にステンレス板を通過する。この様に、拡散スクラバー法 を用いると、空気を濾過する化学フィルターの原理とは全く異なり、ステンレス板の隙間に空気を 流すので通気抵抗が非常に少なく、小さなエネルギーで大容量の空気を除去・処理できる。

 


 これまでの研究で、安価でかつ軽量な基板である不織布への酸化チタンのコーティングが可能となった。そこで、従来の単なる直線的なステンレスの平行板だけでなく、下左図に示すような汚染空気処理量の大きい不織布を用いたプリーツ型拡散スクラバーの製作が可能となった。
 下右図にプリーツ型拡散スクラバーによるNOx除去性能を示した。1 ppm濃度のNOガスを導入した場合に、80%のNOx除去効率が得られた。 約2時間経過しても除去効率の低下はあまり認められなかった。本法は、 数ppm程度の比較的低濃度であるが処理空気量の大きな場合に、窒素酸化物(NOx)を流したまま直接連続的に除去できる最適な技術と言える。  
プリーツ型拡散スクラバープリーツ型拡散スクラバーによる             NOx除去効率(ワンパス)
導入ガス:1ppm NO, 通気流量:100m3/h
光源:ブラックライト(ナショナル FL20S-3L-B,20W)×20本
 

 更に、下右図に示すようなブラックライト1本で内部から効率的にTiO2コーティング基板へ紫外線を照射でき、また外側から自然光である太陽光も取り入れられる歯車型拡散スクラバー(下左写真)の開発を行った。
 ブラックライト点灯にかかる消費電力を削減するため、太陽光を用いたNOx除去実験を行い、太陽光の利用について検討した。2004年11月9〜10日の2日間に亘って実験を行った。導入NOガスを0.2ppmv、通気流量を25m3/hとし、太陽光が得られる日中は太陽光を用いてNOxを除去し、太陽光が得られない夜間はブラックライトを点灯させて実験を継続して行った。実験結果であるNO除去効率と紫外線照射強度の経時変化を下図に示す。
 この結果から、6:10の日の出とともに紫外線照射強度が上昇し、それとともにNO除去効率も上昇し、日中ほぼ100%近くのNO除去効率となり、紫外線が微弱となる日の入付近まで高いNO除去効率が得られた。また、ブラックライトを点灯させた夜間も、約70%のNO除去効率が得られた。又、次の日、ブラックライトを消灯した状態で日の出と共にNO除去効率が上昇し実験の再現性が確認され、歯車型拡散スクラバーにより太陽光を用いてNOxが充分に高い効率で除去できることが確認できた。
酸化チタン光触媒を用いた歯車型拡散スクラバー
 
NO除去効率と紫外線照射強度の経時変化
実験日:2004.11.9 6:00〜2004.11.10 11:00
天候:快晴 雲量:1 通気流量:25m3/h
導入ガス:0.2ppmv NO 
UV測定装置:マキ製作所製 SS-01 分光放射計 UV測定波長:315〜400nm
 

 そのほか、本法は、窒素酸化物(NOX)ばかりではなく、下左図に示す様に、揮発性有機化合物(VOC)を無害のH2O、CO2へ光分解処理することができる。下右表に、小型平行板型拡散スクラバーを使って ホルムアルデヒドを光分解処理した実験結果を示した。10ppm程度のホルムアルデヒドを90%以上除去処理できることが明らかとなった。
 


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