FUJIHARA LABORATORY  
卒業研究・総合デザイン工学課題研究・特別研究第1・特別研究第2
 1年目(4年生)でモノの作り方を知り,2年目(修士1年)で作ったモノの物性が理解でき,3年目(修士2年)でようやく自分の考えに基づいた材料設計ができるようになります。研究の企画立案,実験,外部への発表をトータルにできるようになるのが博士課程です。このような指針に基づいて研究指導を行います。
1.基本的な姿勢
 実験は研究に含まれるが,研究そのものではない。研究を進めるには,その研究の背景,実験手法の特徴と意味,実験装置の原理,得られるデータの意味,理論的解釈などを総合的に調査・判断・検討する必要がある。単に手を動かして実験しているだけではこうした力は身に付かない。実験量以上に,セラミックスについて全般的に勉強する,関連した分野の文献を読む,自分の研究分野の動向を把握する等の主体的な研究姿勢が重要である。
 論文を読めばわかるように,一般にその構成は
    Introduction(緒言)
    Experimental(実験)
    Results(結果)
    Discussion(考察)
    Conclusion(結論)
からなる。3年までの実験レポート作成でもこの構成が踏襲されるが,この5項目すべてが既成の事実である。が,これから行う研究に対しては,この5項目すべてが未知である。研究方針を立てるために緒言及び実験はある程度つかめるが,4月に考えた研究目的及び実験方法がそのまま卒論の緒言及び実験となることはまずない。ということはこれから行う研究はすべて試行錯誤,自分で実際にやってみて考えていくしかない。これが研究である。
2.実験の進め方

 とはいっても,最初から自分だけでなにもかもできるはずはない。そこで,最初はできる限り教員や先輩に教えてもらうことである。どんな些細なことでも,それを知っているのと知らないのとでは,得られる成果が180度変わってしまうこともある(有意義な結果であるか,全く無意味な結果であるかという意味で)。特に実験方法はしつこく聞いてほしい。溶液の撹拌時間,試薬の混ぜ方の順番,電気炉中でのサンプルの置き方等,決して教科書を読んだり文献を読んだりしても得られないノウハウが山ほどある。さらに,同じことでも複数の人に聞くことが大事である(間違った情報を得てしまうこともあるかもしれないし,もっといい方法があるのに知らないままであるかもしれないため)。
 実験装置を扱う上では,必ず何をすると何が起こって,何をすると危険かということを十分理解してほしい。電気炉は高温であるし,漏電する事もある。日常生活で起こり得るようなやけど・感電ではことが済まない。わからないことはすべて人に聞いてとことん理解してから扱うように(自分の身を守るため)。
 装置の不調・故障に気づいたら即刻担当者及び教員に知らせることが重要である。だれが壊したかよりも,だれが放置したかということが問題となる。

3.論文の読み方  
 重要な論文はほとんどが英語で書かれている。ここでいう英語は科学英語であるから大学入試ででてくるような難しい構文や言い回しはでてこない。科学論文は客観性が最重要であるから曖昧な表現,複数の意味にとれる表現や読む人によって意味が変わる表現は書く側がさけるものである。従って必然的に科学英語には平易な文法が使われる。受け身と関係代名詞,その他の熟語を知っていれば十分である。が,しかし,やっかいなのは技術用語・専門用語が使われていることで,これがわからないと何を書いているのかさっぱり理解できない。これらの用語はふつうの英和辞典にでていないことが多く,専門の辞典を使うか,自分で慣れるしかない。さらに,ふつうの単語でも科学の世界で使われるときには日常の英語とは違う意味・ニュアンスのもの多数ある。例えば”prepare”という単語,ふつうは「準備する」(試験の準備をする,パーティーの準備をする等の意味)であるが,我々の世界では「調製する,作製する」という,”ものを作る”という意味になる。こういう言葉も論文をたくさん読んで慣れていくしかない。
4.図書館を使いこなそう (→理工学部メディアセンター
 最大の図書館利用目的は論文に引用されている参考文献探しである。いかなる論文にも最後に参考文献が挙げてあり,これが,その研究分野の背景,詳細な実験方法,理論的解釈などのベースとなっている。したがって,一つの論文を読みこなすには,参考文献までしっかり把握しておく必要がある。
 次にお世話になるのは,JCPDSカード。これはX線回折法という,固体研究者には欠かせない結晶構造解析手段の助けとなるものである。具体的にはX線回折パターンから得られる(hkl)と面間隔dの関係を表にまとめてある。
 INSPECやWeb of Science(文献検索)。これは,自分の知らない論文探しに使う。例えば,発光材料の中で薄膜に関するものがどれだけあって,どんな内容なのか,といったことが検索できる。これは,自分の研究分野の動向を知る上で大変重要。ただし,ここで得られた情報は全てを網羅しているとは限らないので注意。 新着雑誌の目次。これは,最新の研究情報を得るために重要。今やってる研究にダイレクトにつながるものもあるかもしれないし,わからないところをフォローしてくれる文献もあるかもしれない。
参考図書 

セラミックサイエンスシリーズ 全8巻 山口喬・柳田博明 編 (技報堂出版
「セラミックスの科学」 柳田博明・永井正幸 編著 (技報堂出版)
「初級セラミックス学」 曽我直弘 著 (アグネ承風社)
「入門固体化学」 河本邦仁・平尾一之 訳 (化学同人
「固体化学」 田中勝久 著 (東京化学同人)
「結晶・準結晶・アモルファス」 竹内伸・枝川圭一 著 (内田老鶴圃)
「ゾル-ゲル法の科学」 作花済夫 著 (アグネ承風社)
「ゾル-ゲル法の応用」 作花済夫 著 (アグネ承風社)
「ガラス科学の基礎と応用」 作花済夫 著 (内田老鶴圃)
「電子電気機能材料」 一ノ瀬昇 編著 (オーム社
「オプトエレクトロニクス」 水野博之 著 (内田老鶴圃)