研究内容:
私達は、次の2つの課題を中心として研究しています。

 1)天然有機化合物の全合成

 2)天然有機化合物の抽出、単離、構造決定、合成、作用機構解

天然有機化合物とは、自然に存在するさまざまな有機化合物のことを言います。
私達は、これらの中から興味深い生物活性をもった化合物を合成したり、
それらを取り出して、その化学構造を決め、どのような機構でその機能が発現
しているのかを追求しています。

合成研究からは、新しくてみんなが使える有機化学反応が開発できます。
               → 参 照1
また、面白い現象を引き起こす化合物を見つけることで、
自然はなぜそうなっているのかを解き明かすことができます。
生物現象解 明化学と呼んでいます)

これらの研究を通じて、もの造りの基礎研究(新しい医薬品の開発,新しい
機能をもった材料の開発)や、新たな価値の創造(医学、薬学、生化学、生物学、
農学などの分野との協力)を目指しています。

1)天然有機化合物の全合成(→  参照2)の 例を3つ示します。
珊瑚からとれるメチルザルコフィトエート、
土壌からとれるシオマイシン類やケンドマイシン、などを全合成するには,
次の図にあるようにいくつかの部分に分けて、まずそれらを合成します。
次にそれらをつなぎ合わせて、最終的に天然物の全合成を達成します。  
このような研究は大変むずかしく時間のかかる研究ですが、それだけやりがいのある研究です。
みんな一生懸命研究しています。


(Chemistry An Asian Journal 2008, 3, 984 and 1013)


(Journal of the American Chemical Society 2007, 129, 9862)
(The Journal of Organic Chemistry 2009, 74, 230)



(Organic Letters 2010, 12, 1700)


2)天然有機化合物の抽出
(→  参照3)の 例を2つ示します。
動物の中には色のついた汗をかく種がいます。
カバは「赤い血のような汗」をかくと言われています。
しかし、この赤い色素成分についてはこれまで何もわかっていませんでした。
私達は、上野動物園の協力を得て、赤い汗に含まれる色素の化学構造について調べました。
その結果、赤い汗には赤色色素とオレンジ色色素が含まれていることがわかり、
それらの化学構造を決定しました。これらの色素は大変不安定でしたが、
カバの皮膚を紫外線や菌から守る役割があることがわかりました。
(Nature 2004, 429, 363)



キノコの中には毒をもつ種があります。
キノコの誤食による中毒は世界中で見られます。
ニセクロハツもその1つですが、これまで毒成分の本体は分かっていませんでした。
私達は、その毒成分本体が2−シクロプロペンカルボン酸であることを突き止めました。
この化合物は、毒としては世界で最も小さなカルボン酸です。

(Nature Chemical Biology 2009, 5, 465)



その他に、貝類、クラゲなどからも特徴のある化合物を抽出して います。
このような未知の化合物を取り出そうとする研究にも大変な苦労があります。

しかし、「研 究は面白くなくてはならない」
をモットー に日夜はりきっています。



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