研究室を選ばれる皆さんへ

   有機化学において、今日まで最も重要とされてきたもの、そしてこれからの発展の基礎となるもの。私達はそれを「有機化合物を(しばしば光学的にも)純粋なかたちで、効率良く合成すること」だと考えています。現代の重要な先端化学の一つである生物化学も、研究対象となる様々な有機化合物を提供する化学合成=有機合成化学に支えられています。その結果、これまで以上に「もの作り(創り)」 のできる人間が社会に求められています。
   残念ながら、現代に至ってもなお天然が営む有機合成に比べて、人類が実験室で行っている有機合成は効率の悪い点も目立ちますが、悪戦苦闘の最中に遭遇した「思わぬ拾い物」が、やがて有機化学の新たな飛躍の第一歩となった事例だっていくつも存在します。
   私達は新規な有機合成的アプローチの創造を期待しながら、生物学上(あるいは薬理学上)重要な抗菌・抗腫瘍・抗HIV活性などを有する天然有機化合物およびそれらの類縁物質の合成研究を行っています。いくつかの研究課題に関しては薬理活性の検定等で企業と提携をしながら研究を進めています。
   頭(想像力と創造力)と手(実験)を駆使し、未知なる化合物をつくる喜びを通して、有機合成化学に己の将来を託す、若い皆さんとの出会いを待っています。
有機合成化学研究室 教授 只野 金一