研究室紹介

研究概要

π共役分子の化学:分子でつくる磁石、新しい電池の開発を目指して

有機機能材料化学研究室(吉岡研究室)では、π共役系の特性を活かして新しい有機機能材料の設計・合成・キャラクタリゼーションを行っています。

安定有機ラジカルの化学 不対電子をもつ有機分子は、”ラジカル分子”と呼ばれていますが、その名の通り高い反応性を示し、一瞬に不対電子は消滅します。たとえば、ラジカル重合の生長ラジカルがその例です。安定なラジカル分子を利用すれば、不対電子を持たない共役分子では、期待できない様々な機能が期待できます。われわらの研究室では、安定有機ラジカルの合成研究を永年行っており、π共役系や立体障害性基の導入など様々な工夫を施して不対電子を安定に維持できる設計法を確立してきました。その結果、普通の有機化合物と同様に精製し、結晶にすることが可能になりました。


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遷移金属錯体の化学 遷移金属錯体は、金属イオンの多様な電子状態と配位子との電子的な相互作用により様々な機能が期待されます。とくに、配位子にπ共役系が存在するとその特徴がさらに明確になってきます。生体内での酸化還元反応、酸素の貯蔵・運搬がその一例です。我々の研究室では、配位子に共役系を有するシッフ塩基や生体内でも重要な役割をしているポルフィリン類に着目して、その電子状態と分子設計のよる機能の制御を目指しています。

分子でつくる磁石 磁石と聞けば誰でも鉄や酸化鉄など堅い材料を連想するほど、磁性は金属元素に固有の性質であり、有機物とは無縁の機能であると思われてきました。ところが近年、このような磁石のイメージが変わり、比重も軽く柔らかい有機材料で磁石ができるのではないかということがわかってきました。果たして、そのような有機磁性体は創ることは可能でしょうか?磁石どうしが引きつけ合ったり、反発したりする性質の起源を追求していくと、不対電子のスピン磁気モーメントにたどりつきます。不対電子はミニ磁石の性質を持ちますが、1つの分子のもつ磁気モーメントは非常に微弱です。したがって個々の分子の持つスピンの向きを分子間で揃える技術が必要です。我々は、水素結合など分子間に働く力を活用する方法を確立し、固体状態で個々の分子のスピンの向きがそろったナノサイズ径の分子ワイヤーをつくることに成功しました。現在この分子スピンワイヤーを決まった向きに並べる実験に取り組んでいます。最終的には高分子化し室温で磁石となる軽い材料に開発を目指しています。産業面のみならず、体中で薬物を運搬するなど医療面での応用も期待されます。


分子の特性を活かした電池材料の開発 安定有機ラジカルや遷移金属錯体は、可逆的に酸化したり還元したりする特徴をもっています。中性ラジカルを安定にする条件を満たしていれば、酸化により生成するカチオン種や、還元により生成するアニオン種は安定であっても不思議ではありません。また、遷移金属は、複数の酸化状態をとることができるのでその錯体も化学的に酸化還元を行うことができます。安定有機ラジカルや遷移金属錯体は、繰り返し酸化還元することができ、新しい電池の材料としても用いることができます。酸化還元がおこる電位をコントロールできれば、電池の起電力などをより高性能な状態に改良することもできます。様々な化学構造を有する化合物を合成し、電気化学的な特性を明らかにする研究にも取り組んでいます。