新 し い 反 応 ・方 法 論 の 開 発


糖質の立体選択的変換反応の開発
 前ページにて述べたように、光学活性体の効率的な供給は現代の有機合成化学の大きな課題の一つです。私達は、先ほど述べた不斉合成法の他に、キラルプール法による光学活性化合物の新規合成法の開発も行っています。最も安価な光学活性天然有機化合物であるD−グルコースを出発原料とし、当研究室にて見出した立体選択的なクライゼン転位反応を経て、新規なキラルビルディングブロックとなる化合物を合成しました。その後、天然有機化合物への全合成に応用することでその有用性が確認されています。

ref.) 1) 只野金一,石原 淳,小川誠一郎,有合化,49, 327 (1991). 2) K. Tadano, In Studies in Natural Products Chemistry, Atta-ur-Rahman Ed.; Elsevier: Amsterdam, 1992; Vol.10. p.405. 3) 高尾賢一,石原 淳,只野金一,有合化,56, 1026 (1998). 4) K. Takao, J. Ishihara, K. Tadano, In Studies in Natural Products Chemistry, Atta-ur-Rahman Ed.; Elsevier: Amsterdam, 2000; Vol.24. p.3.

 さらに、このクライゼン転位成績体より数工程にて得られるスピロ化合物を三次元不斉空間を有する反応場として捉え、様々なタイプの有機合成反応を行いました。その結果から、これら化合物が有する不斉空間が有益な立体制御の因子として働くことが確認されています。