こちらのページでは,当研究室の最近の研究成果についてご紹介いたします。
(−)-カロフィコ酸A三環性骨格の立体選択的合成
カロフィコ酸Aは、フィジーのヘラルド水路付近にて採取された紅藻
Callophycus serratus の抽出液より見出された天然有機化合物です。同天然物はジテルペンと安息香酸のハイブリッド化合物であり、臭素化された三環性骨格中に第四級不斉炭素を含む三連続不斉中心を有します。私たちは、新規アリルホウ素試薬を用いたアリルホウ素化反応による第四級不斉炭素の立体選択的構築と、ラジカル環化やパラジウム触媒による還元的環化によるシクロヘキサン環形成を経て、カロフィコ酸 A の核となる三環性骨格の立体選択的合成を達成しました。
1) Sakama, A.; Kameshima, R.; Motohashi, Y.; Sumida, W.; Unno, Y.; Yoshida, K.; Ogura, A.;
Takao, K.
J. Org. Chem. 2020, 85, 3245.
(−)-ミスラミンの不斉全合成
ミスラミンはケシ科の植物より単離されたアルカロイドで、特異な五環性骨格を有しています。私たちは有機分子触媒を用いるエナンチオ選択的分子内Friedel−Crafts型1,4-付加反応を鍵として、本天然物の初の不斉全合成を達成しました。
1) Yoshida, K.; Fujino, Y.; Takamatsu, Y.; Matsui, K.; Ogura, A.; Fukami, Y.; Kitagaki, S.; Takao, K.
Org. Lett. 2018, 20, 5044.
(±)-クラビラクトンDの全合成および構造訂正
私達はシクロブテンの骨格変換を伴う開環/閉環メタセシス反応(ROM/RCM)を鍵として、(±)-クラビラクトンDの初の全合成を達成し、提唱されていた構造を訂正しました。
1) Takao, K.; Nemoto, R.; Mori, K.; Namba, A.; Yoshida, K.; Ogura, A.
Chem. Eur. J. 2017, 23, 3828.
2) Takao, K.; Mori, K.; Kasuga, K.; Nanamiya, R.; Namba, A.; Fukushima, Y.;
Nemoto, R.; Mogi, T.; Yasui, H.: Ogura, A.; Yoshida, K.; Tadano, K.
J. Org. Chem. 2018, 83, 7060.
ピリジンN-オキシド触媒によるオキシラン誘導体の開環に伴う位置選択的クロロシリル化反応
私達はピリジンN-オキシド誘導体を触媒に用いて、嵩高いシリル化剤によるオキシラン誘導体の位置選択的クロロシリル化反応を開発しました。それをカルベジロールの合成に応用しました。
1) Yoshida, K.; Suzuki, H.; Inoue, H.; Matsui, K.; Fujino, Y.; Kanoko, Y.; Itatsu, Y.; Takao, K.
Adv. Synth. Catal. 2016, 358, 1886-1891.
(+)-ビブサニン A の全合成
亜鉛を用いたBarbier型アリル化反応により不斉四級炭素
を立体選択的に構築し,分子内野崎-檜山-岸反応と光延反応を組み合わせて(+)-ビブサニンAが有する特異な11員環骨格を効率よく構築し,本天然物の初の全合成を達成しました。
1) Takao, K.; Tsunoda, K.; Kurisu, T.; Sakama, A.; Nishimura, Y.; Yoshida, K.; Tadano, K.
Org. Lett. 2015, 17, 756.
2) Akihiro, S.; Nishimura, Y.; Motohashi, Y.; Yoshida, K.; Takao, K. Tetrahedron 2016
72, 5465-5471.
ピリジン N-オキシドを触媒に用いたアルコールのシリル化反応
私達はピリジン N-オキシド誘導体を触媒に用いることにより,TBDPS基などの嵩高いシリル基による第二級アルコールのシリル化反応,MS4Aを用いたアミンフリーの条件によるシリル化反応を開発しました。
1) Yoshida, K.; Takao, K. Tetrahedron Lett. 2014, 55, 6861.
2) Yoshida, K.; Fujino, Y.; Itatsu, Y.; Inoue, Y.; Kanoko, K.; Takao, K. Tetrahedron Lett. 2016
57, 627.