研究概要
層状構造、ナノシート、ネットワーク構造など、二次的な構造をもつ有機および無機材料に注目し、分子・ナノ構造・材料設計によって構造の柔軟性を制御することで、分子や化合物のそのものの性質と二次元的な構造の相乗効果を生み出し、資源・環境、エネルギー、センサ関連分野における機能開拓および性能向上を目指した研究を行っています。また、これらの材料に関する研究において、小規模な実験データに対するデータ科学的手法と研究者の考察を融合したマテリアルズインフォマティクス(MI)や各種の工程へのオートメーション化を最大限に活用し、高効率な物質探索・プロセス最適化・性能向上を目指しています。
新着情報
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層状ポリジアセチレンと刺激応答性材料を組み合わせた「カスケード型応答」に関する総説(Feature Article)が、Chemical Communications誌に掲載受理されました。本成果は、大阪工業大学工学部の藤井秀司教授との共同執筆で、藤井先生の刺激応答性のカプセル材料の「カスケード型応答」と合わせた解説です。本総説は、Chemical Communications誌ChemComm's 60th Anniversary Collectionへの招待論文です。
*Yuya Oaki, *Syuji Fujii, “Cascading responses of stimuli-responsive materials”
Chemial Communications 2024, 60, 9163-9176. 本論文は、当該号のBack Coverのイラストに採用されました。層状ポリジアセチレンと力学的刺激で崩壊するカプセル状の材料(ドライリキッド)を複合したスポンジ状のデバイスの圧縮応力応答性の向上、圧縮時間および除荷後の経過時間の可視・定量化に関する論文がSmall誌に掲載受理されました。本デバイスにより、2種類の外科手術器具が生じる圧縮応力分布の違いを可視化することができました。本成果は、大阪工業大学工学部の藤井秀司教授、慶應義塾大学医学部の岡林剛史専任講師・茂田浩平専任講師・清島亮助教との共同研究によるものです。
Nahoko Ono, Ryo Seishima, Kohei Shigeta, Koji Okabayashi, Hiroaki Imai, *Syuji Fujii, *Yuya Oaki, “High-Sensitive Spatiotemporal Distribution Imaging of Compression Stresses Based on Time-Evolutional Responsiveness”
Small 2024, 20, 2400938. 本論文は、当該号のFrontispieceのイラストに採用されました。小規模データに対する機械学習により、水電解水素発生反応の電極触媒の活性予測モデルを作成し、それをもとに設計・合成したベンゾキノンとベンゾオキサゾールから成る非晶質共役高分子ネットワークが、メタルフリー電極触媒として優れた活性であることを示した論文が、Journal of Materials Chemistry A誌に掲載受理されました。また、疎水的な高分子骨格にも関わらず、水中で触媒活性を示すために、水和状態が重要であることを示唆する結果が得られました。本成果は、筑波大学大学院システム情報工学研究科の五十嵐康彦准教授、東京理科大学理学部の菱田真史准教授との共同研究です。
Wakana Hamada, Mafumi Hishida, Ryuto Sugiura, Haruka Tobita, Hiroaki Imai, Yasuhiko Igarashi and Yuya Oaki*, “Efficient design and synthesis of an amorphous conjugated polymer network for a metal-free electrocatalyst of hydrogen evolution reaction"
Journal of Materials Chemistry A 2024, 12, 3294-3303. 本論文は、当該号のInside back coverのイラストに採用されました。当研究グループで検討してきたベンゾキノンとピロールから構成される非晶質共役高分子ネットワークについて、沈殿重合系の構築により粒径制御を行い、それを水電解水素発生反応の電極触媒として応用した論文が、Nanoscale Advances誌に掲載受理されました。
Ryuto Sugiura, Hiroaki Imai and Yuya Oaki*, “Morphology and size control of an amorphous conjugated polymer network containing quinone and pyrrole moieties via precipitation polymerization"
Nanoscale Advances 2024, 6, 1084–1090. 本論文は、当該号のInside back coverのイラストに採用されました。層状ポリジアセチレンの層間に複合したゲストによるまさつ力応答性の違いについて、原子間力顕微鏡で直接観察した論文が、Advanced Materials Interfaces誌に掲載受理されました。本成果は、東京大学生産技術研究所の杉原加織准教授との共同研究です。
Bratati Das, Nano Shioda, Shunsuke Yagi, Yuya Oaki,* and Kaori Sugihara*, “Nanoscopic Force Sensitivity of Polydiacetylene 2D Layered Composites with Guest Molecules"
Adv. Mater. Interfaces 2024, 11, 2300745 (7 pages).
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- 2023
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伸縮性あるポリウレタンと層状ポリジアセチレンを、両者と相互作用ある高分子ゲストを用いて複合し、ポリウレタンの引張・圧縮・摩擦による刺激の蓄積量を可視・定量化した論文が、ACS Applied Materials & Interfaces誌に掲載受理されました。
Yuki Mochizuki, Hiroaki Imai, Yuya Oaki*, “Imaging of Accumulated Mechanical Stresses Using Self-Assembled Layered Conjugated Polymer"
ACS Applied Materials & Interfaces 2023, 15, 48725.気相重合法による導電性高分子ナノ粒子の安定な水分散液の作製と応用に関する論文が、Langmuir氏に掲載受理されました。本研究は、大阪工業大学工学部の藤井秀司教授との共同研究です。
Yuya Atsuta, Kazusa Takeuchi, Nano Shioda, Wakana Hamada, Tomoyasu Hirai, Yoshinobu Nakamura, Yuya Oaki*, Syuji Fujii*, “Colloidally Stable Polypyrrole Nanoparticles Synthesized by Surfactant-Free Coupling Polymerization"
Langmuir 2023, 39, 14984.環状モノマーの自己組織化により得られる層状ポリジアセチレンをはく離し、環状分子で構成されたナノシートの作製とその架橋剤としての応用を示した論文が、Advanced Materials Interfaces誌に掲載受理されました。環状構造に由来する柔軟なナノシートが得られています。本成果は、Hanyang大学のJong-Man Kim教授との共同研究です。
Nano Shioda, Jung-Moo Heo, Bubsung Kim, Hiroaki Imai, Jong-Man Kim,* Yuya Oaki*, “Nanoarchitectonics of Exfoliated Flexible Nanosheet Based on Laterally Stacked Macrocycles"
Advanced Materials Interfaces 2023, 10, 2300521. 本論文は、当該号のCover Pictureに採用されました。<本学理工学メディアセンター(図書館)の依頼で、『熱・光・力を見える化するソフトな二次元材料の化学』と題し、学生による実演を交えた講演(サイエンスカフェ)を開催致しました。
当日の動画と資料については、学内限定(要慶應ID)でこちらから公開されていますので御覧下さい。層状無機有機複合体から得られる表面修飾ナノシートの集積を利用し、水に対する接触角が165度を超えるフッ素フリー超撥水コーティングを得た論文が、Bulletin of the Chemical Society of Japan誌に掲載受理されました。
Ryota Hikichi, Yuki Tokura, Yasuhiko Igarashi, Hiroaki Imai, and Yuya Oaki*, “Fluorine-Free Substrate-Independent Superhydrophobic Coatings by Nanoarchitectonics of Polydispersed 2D Materials"
Bulletin of the Chemical Society of Japan 2023,96, 766.マテリアルズインフォマティクスを活用したリチウムイオン二次電池有機負極活物質の探索に関して、予測モデルの進化とそのデータ科学的な妥当性の検証を行った招待論文がEnergy Advances誌のThemed collection, Artificial Intelligence & Machine Learning in Energy Storage & Conversionに掲載受理されました。これは、筑波大学大学院システム情報工学研究科の五十嵐康彦准教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科の岡田真人教授との共同研究による成果です。
Haruka Tobita, Yuki Namiuchi, Takumi Komura, Hiroaki Imai, Koki Obinata, Masato Okada, Yasuhiko Igarashi*, Yuya Oaki*, “Capacity-prediction models for organic anode-active materials of lithium-ion batteries: advances in predictors using small data"
Energy Advances 2023, 2, 1014. 本論文は、当該号のBack Coverに採用されました。層層状ポリジアセチレンとカプセル状の材料(ドライリキッド)を複合した紙基板デバイスにより、弱い摩擦力の分布を可視・定量化した論文がMaterials Horizons誌に掲載受理されました。本デバイスは、分子設計では容易に到達できない、毛筆程度の弱いまさつ力のマッピングを可能とし、ベテラン・経験者・初心者による毛筆の筆圧を可視化することができました。本成果は、大阪工業大学工学部の藤井秀司教授、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科の桂誠一郎教授との共同研究によるものです。
Nano Shioda, Ryotaro Kobayashi, Seiichiro Katsura, Hiroaki Imai, Syuji Fujii,* Yuya Oaki*, “High-sensitive friction-imaging device based on cascading stimuli responsiveness
Materials Horizons 2023, 10, 2237.層状ポリジアセチレンと力学的刺激で崩壊するカプセル状の材料(ドライリキッド)を複合したスポンジ状のデバイスを作製し、数十~百kPa程度の弱い圧縮応力の分布を可視・定量化した論文がAdvanced Sciences誌に掲載受理されました。本デバイスにより、弱い圧縮応力の分布のイメージングが可能となり、その応用例として、外科手術器具により生じる圧縮応力の分布と大きさを可視化することができました。本成果は、大阪工業大学工学部の藤井秀司教授、慶應義塾大学医学部の岡林剛史専任講師・清島亮助教との共同研究によるものです。
Nahoko Ono, Ryo Seishima, Koji Okabayashi, Hiroaki Imai, *Syuji Fujii, *Yuya Oaki, “Stimuli-Responsive Sponge for Imaging and Measuring Weak Compression Stresses”
Advanced Science 2023, 10, 2206097. 本論文は、当該号のFrontispieceのイラストに採用されました。
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当研究グループの学生が、2022年10月に開催された第12回CSJ化学フェスタにおけるポスター発表で、最優秀ポスター発表賞(引地亮太(M2))および優秀ポスター発表賞(大野菜穂子(M1)、塩田菜乃(M2)、望月佑起(M2))を受賞しました。 層状ポリジアセチレンの層間にかさ高い高分子ゲストを導入することで柔軟化し、大面積コーティングと日常生活に近い温度域での温度応答性色変化を実現しました。この温度可視化コーティングを応用し、比熱の比色定量化や切開等の外科手術時に用いるエネルギーデバイス周辺に生じる温度分布を可視化できました。本成果は、ACS Applied Materials & Interfaces誌に掲載されました。本研究は、本学医学部・外科学教室の松田諭助教・川久保博文准教授との共同研究による成果です。
Aya Edagawa, Satoru Matsuda, Hirofumi Kawakubo, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Coatable 2D Conjugated Polymers Containing Bulky Macromolecular Guests for Thermal Imaging”
ACS Applied Materials & Interfaces 2022, 14, 43792-43801. 本論文は、当該号のSupplementary Journal Coverのイラストに採用されました。層状無機有機複合体のはく離によって生成する表面修飾ナノシートの厚さ(層数)が、ナノシートの横幅サイズ分布と相関関係があることを見出し、これをもとにサイズ分布予測モデルを活用して厚さ制御を行った論文がCell press社のiScience誌に掲載されました。
Yuri Haraguchi, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Selective Syntheses of Thick and Thin Nanosheets Based on Correlation between Thickness and Lateral-Size Distribution”
iScience 2022, 25, 104933.層状有機無機複合体のはく離により得られる表面修飾ナノシートの多分散性を活かし、角度依存性のないナノシート薄膜とそれを活用した生体アミンのセンシングを行った論文が、Advanced Materials Interfaces誌に掲載されました。
Yuri Haraguchi, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Nanosheet-Based Uneven Thin Film Exhibiting Angle-Independent Structural Color and Its Application to Detection of Biogenic Amines”
Advanced Materirals Interfaces 2022, 9, 2201111.小規模データに対するマテリアルズインフォマティクスの手法を活用し、リチウムイオン二次電池の有機負極活物質の容量予測モデルを改良・構築しました。また、予測モデルを活用することで、サリチル酸の誘導体(5-ホルミルサリチル酸)が低分子にも関わらず高性能を示すことを発見しました。本成果は、ACS Applied Energy Materials誌に掲載されました。これは、筑波大学大学院システム情報工学研究科の五十嵐康彦准教授との共同研究による成果です。
Takumi Komura, Kosuke Sakano, Yasuhiko Igarashi, Hiromichi Numazawa, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “A Capacity-Prediction Model for Exploration of Organic Anodes: Discovery of 5-Formylsalicylic Acid as a High-Performance Anode Active Material”
ACS Applied Energy Materials 2022, 5, 8990-8998.当グループで開拓してきた低温・常圧下での導電性高分子の合成、コーティング、階層的な複合体の形成、それらのスーパーキャパシタや水素発生電極触媒などの電気化学的応用に関する総説(Minireview)が、Nanoscale Advances誌に掲載されました。本解説は、当グループで博士号を取得した相模中央化学研究所・研究員の佐藤宏亮博士との共著です。また、本論文は特集号"Design and function of materials nanoarchitectonics"への招待論文です。
*Yuya Oaki, Kosuke Sato, “Nanoarchitectonics for conductive polymers using solid and vapor phases”
Nanoscale Advances 2022, 4, 2273-2281. 本論文は、当該号のInside Front Coverのイラストに採用されました。小規模データに対するマテリアルズインフォマティクスの手法を活用し、文献データのみからリチウムイオン二次電池の有機正極活物質の性能(電位・容量・エネルギー密度)予測モデルを構築した論文が、ACS Applied Energy Materials誌に掲載されました。これは、筑波大学大学院システム情報工学研究科の五十嵐康彦准教授、ソフトバンク株式会社との共同研究による成果です。
Kosuke Sakano, Yasuhiko Igarashi, Hiroaki Imai, Shuntaro Miyakawa, Takaya Saito, Yoshiki Takayanagi, Koji Nishiyama, *Yuya Oaki, “Performance Predictors for Organic Cathodes of Lithium-Ion Battery”
ACS Applied Energy Materials. 2022, 5, 2074-2082.当グループで開拓しているマテリアルズインフォマティクスの手法、スパースモデリングと研究者の知見の融合は、小規模データを扱う上で他の機械学習法と比較してどのように優れているのかを、2次元材料の制御された合成をモデルケースとしてデータ科学的に検証した論文が、英国化学会から2022年に創刊されるDigital Discovery誌に掲載されました。これは、筑波大学大学院システム情報工学研究科の五十嵐康彦准教授との共同研究による成果です。
Yuri Haraguchi, Yasuhiko Igarashi, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “A sparse modeling for small data: Case studies in controlled syntheses of 2D materials”
Digital Discovery 2022, 1, 26-34..本論文は、当該号のInside Coverのイラストに採用されました。また、同誌のtwitterにもイラストともに紹介されました。環状ジアセチレンモノマーから構成される層状ポリジアセチレンについて、インターカレーションや刺激応答性色変化の挙動を検討し、それを凍結療法における温度分布可視化へ応用した論文が、英国化学会から2022年に創刊されるSensors & Diagnostics誌からの招待を経て掲載されました。環状ジアセチレンの柔軟性を活かし、幅広い温度域での色変化を実現しました。これは、Hanyang大学のJong-Man Kim教授との共同研究による成果です。
Nano Shioda, Jung-Moo Heo, Bubsung Kim, Hiroaki Imai, *Jong-Man Kim, *Yuya Oaki, “Layered macrocycles with flexibility and tunable dynamic properties for wide-range thermoresponsive color changes”
Sensors & Diagnostics 2022, 1, 160-168.. 本論文は、当該号のInside Back Coverのイラストに採用されました。慶應義塾大学理工学部が発行し、毎回ひとりの研究者を取り上げる研究紹介誌「新版・窮理図解」に「慶應理工の柔軟な二次元材料の化学~分子を動かして機能させるための柔軟な材料設計を求めて」という題目で取り上げて頂きました。
こちらをご覧下さい。
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小規模な実験データに対するマテリアルズインフォマティクスに関する総説論文が、Bulletin of the Chemical Society of Japan誌にMasterpiece Materials with Functional Excellenceシリーズとして掲載受理されました。本解説記事は、JSTさきがけ・マテリアルズインフォマティクス領域(2016-2020)での研究成果に基づいております。
*Yuya Oaki, Yasuhiko Igarash “Materials Informatics for 2D Materials Combined with Sparse Modeling and Chemical Perspective: Toward Small-Data-Driven Chemistry and Materials Science”
Bulletin of the Chemical Society of Japan 2021, 94, 2410-2422. 本論文は、当該号のInside Coverのイラストに採用されました。層状ポリジアセチレンの層間に水素結合性ゲスト分子を導入することで層構造を柔軟にし、広域な温度に応答した色変化挙動を実現した研究が、ChemPlusChem誌に10th Anniversary Special Collectionへの招待論文として掲載受理されました。
Yuki Mochizuki, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “A Layered Polydiacetylene Containing Hydrogen-Bonding 4,4′-Bipyridyl Guests: Reversible Color Changes with a Wide-Range Temperature Response”
ChemPlusChem 2021, 86, 1563-1568. 本論文は、当該号のCover Pictureのイラストに採用され、Cover Profileに研究グループの紹介をして頂きました。マテリアルズインフォマティクスを活用することで、はく離によって得られるナノシート材料の横幅サイズ分布の制御を行った研究に関する論文が、Advanced Theory and Simulations誌に掲載されました。トップダウンプロセスにより制御が難しかったナノシート材料のサイズ分布を、機械学習を活用することで制御することができました。これは、筑波大学大学院システム情報工学研究科の五十嵐康彦准教授との共同研究による成果です。
Yuri Haraguchi, Yasuhiko Igarashi, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Size-Distribution Control of Exfoliated Nanosheets Assisted by Machine Learning: Small-Data-Driven Materials Science Using Sparse Modeling”
Advanced Theory and Simulations 2021, 4, 2100158. 本論文は、当該号のBack Coverのイラストに採用されました。グラファイトや層状共役高分子などのファンデルワールス力で積層した層状物質を、高収率で数層レベルのナノシートをはく離して得るための収率予測モデルを構築し、それを実践した研究に関する論文が、Chemical Communications誌に掲載されました。従来、マテリアルズインフォマティクスを活用して確立してきた遷移金属酸化物ナノシートの収率予測モデルを、異なる層状物質の系へ適用したものです。これは、筑波大学大学院システム情報工学研究科の五十嵐康彦准教授との共同研究による成果です。
Kyohei Noda, Yasuhiko Igarashi, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Yield-prediction models for efficient exfoliation of soft layered materials into nanosheets”
Chemical Communications 2021, 57, 5921-5924.小規模実験データへの機械学習(スパースモデリング)をもとに、層状物質のはく離によって得られるナノシート材料の横幅サイズ予測モデルを構築し、未知の系での横幅サイズ制御を行った研究に関する論文が、Nanoscale誌に掲載されました。これは、筑波大学大学院システム情報工学研究科の五十嵐康彦准教授との共同研究による成果です。
Ryosuke Mizuguchi, Yasuhiko Igarashi, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Lateral-Size Control of Exfoliated Transition-Metal-Oxide 2D Materials by Machine Learning on Small Data”
Nanoscale 2021, 13, 3853-3859.層状ポリジアセチレンとドライリキッドを統合したデバイスにより、kPa程度とそれ以下の弱い圧縮応力の可視・定量化を可能とした論文がAdvanced Materials誌に掲載受理されました。これまで、弱い力学的刺激で刺激応答性材料中の分子を動かすことが容易ではありませんでしたが、刺激応答性材料を組み合わせるアプローチによりこの分子科学の限界を突破することができました。これは、大阪工業大学工学部の藤井秀司教授との共同研究による成果です。
Minami Nakamitsu, Keigo Oyama, Hiroaki Imai, *Syuji Fujii, *Yuya Oaki, “Ultrahigh-Sensitive Compression-Stress Sensor using Integrated Stimuli-Responsive Materials”
Advanced Materials 2021, 33, 2008755.
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「2次元材料の設計に向けたソフトな層状物質のはく離の化学」と題した解説記事が、Chemistry Letters誌のVol. 50 Commemorative Highlight Review に掲載受理されました。柔軟な層状物質を活用したはく離のコンセプト、当研究グループの発見からマテリアルズインフォマティクスの活用に至る最新の成果を解説しています。本解説の主要部分は、JSTさきがけ(2016-2019年度)における研究成果をまとめたものです。
*Yuya Oaki, “Exfoliation Chemistry of Soft Layered Materials toward Tailored 2D Materials”
Chemistry Letters 2020, 50, 305-315.「ソフトな層状物質のインターカレーションと柔軟性の化学」と題した解説記事が、Chemical Communications誌のFeature Articleに掲載受理されました。層状構造の柔軟性ならではの機能を発現している優れた先行研究と、当研究グループの刺激応答性色変化を示す層状ポリジアセチレンの設計・作製・応用に関する研究を解説しています。
*Yuya Oaki, “Intercalation and Flexibility Chemistries of Soft Layered Materials”
Chemical Communications 2020,56, 13069-13081. 本論文は、当該号のInside Coverのイラストに採用されました。層状ポリジアセチレン/L-アルギニン複合体が、固相状態でもマイナス150℃程度から+60℃付近の低温かつ幅広い温度域で色変化が起こることを見出しました。これは、通常、剛直な共役高分子の分子運動が起こりにくい温度域においても、柔軟性制御によって動的機能を発現しうることを示唆しています。本成果は、Small誌に掲載されました。
Kei Watanabe, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Solid-State Low-Temperature Thermoresponsive and Reversible Color Changes of Conjugated Polymer in Layered Structure”
Small 2020, 16, 2004586. 本論文は、当該号のFrontispieceのイラストに採用されました。内閣府・経産省が調査の一環として実施し、学校法人河合塾 教育研究開発部が運営している中高生のための企画、「みらいぶっく学問・大学ナビ、若手研究が世界を変える!」のWebサイトに取り上げて頂きました。
https://www.miraibook-research.net/wakate/s2137/機能分子を組み込んだ非晶質かつフレキシブルな共有結合性高分子ネットワークの合成方法の提案と、本手法によって導入したキノン部位の活用による高容量キャパシタに関する論文が、Chemical Science誌に掲載されました。これは、國立清華大学のChi-How Peng教授との共同研究による成果です。
Jumpei Suzuki, Akira Ishizone, Kosuke Sato, Hiroaki Imai, Yu-Jen Tseng, Chi-How Peng, *Yuya Oaki, “Amorphous flexible covalent organic networks containing redox-active moieties: A noncrystalline approach to assembly of functional molecules”
Chemical Science 2020,11, 7003-7008. 本論文は、当該号のInside Back Coverのイラストに採用されました。小規模データによる実験主導マテリアルズインフォマティクスに関する最近の成果をまとめた解説記事(日本語)が、高分子に掲載されました。
*緒明佑哉, 五十嵐康彦, “小規模データによる実験主導マテリアルズインフォマティクス”
高分子 2020,69, 290-291.実験主導マテリアルズインフォマティクスによって収率予測モデルを作成し、遷移金属酸化物の表面修飾ナノシートを高収率で得る研究に関する論文が、Advanced Theory and Simulations誌に掲載されました。これは、筑波大学大学院システム情報工学研究科の五十嵐康彦准教授との共同研究による成果です。
Kyohei Noda, Yasuhiko Igarashi, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Efficient Syntheses of 2D Materials from Soft Layered Composites Guided by Yield Prediction Model: Potential of Experiment‐Oriented Materials Informatics”
Advanced Theory and Simulations 2020, 3, 2000084.層状ポリジアセチレンとポリ-N-イソプロピルアクリルアミドの複合による伸縮可能なゲルの作製とそれを応用したマイクロ波の可視定量化に関する論文が、ACS Sensors誌に掲載されました。
Minami Nakamitsu, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Visualization and Quantification of Microwave using Thermo-Responsive Color-Change Hydrogel”
ACS Sensors 2020, 5, 133-139.ポリジアセチレンとポリエチレンイミンの層状複合体による紙基板デバイスを使い、歯磨きのブラッシング力などの弱いまさつ力を可視・定量化した論文が、Journal of Materials Chemistry C誌に掲載されました。
Kei Watanabe, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “A paper-based device of a specially designed soft layered polymer composite for measurement of weak friction force”
Journal of Materials Chemistry C 2020, 8, 1265-1272. 本論文は、掲載号の裏表紙内側のイラストに採用され、2020 Journal of Materials Chemistry C HOT Papersに選出されました。
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当研究グループがJSTさきがけの支援を受け、筑波大学大学院システム情報工学研究科の五十嵐康彦准教授と共同で進めた「小規模データをもとにした実験主導マテリアルズインフォマティクス」を活用したナノシート材料の高収率合成およびリチウムイオン二次電池有機負極活物質の探索に関する以下の2報の論文が、当該論文誌の中でともにTOP DOWNLOADED PAPER 2018-2019(出版後1年間のダウンロード数トップ10 %以内)に選ばれました。今後も、実験科学者としてのマテリアルズインフォマティクスの活用により、効率的なプロセス最適化や物質探索、さらにはそれらの社会実装を推進したいと思います。
Hiromichi Numazawa, Yasuhiko Igarashi, Kosuke Sato, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki
“Experiment-Oriented Materials Informatics for Efficient Exploration of Design Strategy and New Compounds for High-Performance Organic Anode”
Advanced Theory and Simulations 2019, 2, 1900130. Gentoku Nakada, Yasuhiko Igarashi, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki,
“Materials-Informatics-Assisted High-Yield Synthesis of 2D Nanomaterials through Exfoliation”
Advanced Theory and Simulations 2019, 2, 1800180.層状ポリジアセチレンの刺激応答性色変化挙動の制御とその応用に関する最近の成果をまとめた解説記事(日本語)が、化学工業誌に掲載されました。。
*緒明佑哉, “柔軟な層状高分子材料の刺激応答性制御と外部刺激の可視・定量化”
化学工業 2019,70, 778-784.ポリスチレン樹脂に層状ポリジアセチレン(PDA)を複合し、ガラス転移による分子の動きはじめを可視化した論文が、Chemical Communications誌に掲載されました。これは、國立清華大学のChi-How Peng教授との共同研究による成果です。
Shuhei Ishioka, Kei Watanabe, Hiroaki Imai, Yu-Jen Tseng, Chi-How Peng, *Yuya Oaki, “Glass-transition-induced color-changing resins containing layered polydiacetylene”
Chemical Communications 2019,55, 11723.マテリアルズインフォマティクスを活用し、高容量と耐久性を両立したリチウムイオン電池有機高分子負極活物質の探索と合成に関する論文が、Advanced Theory and Simulations誌に掲載されました。これは、東京大学大学院新領域創成科学研究科の五十嵐康彦助教との共同研究による成果です。
Hiromichi Numazawa, Yasuhiko Igarashi, Kosuke Sato, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Experiment-Oriented Materials Informatics for Efficient Exploration of Design Strategy and New Compounds for High-Performance Organic Anode”
Advanced Theory and Simulations 2019, 2, 1900130. 本論文は、当該号の表紙裏側のイラストに採用されました。
本成果は、科学技術振興機構ホームページ、化学工業日報(9月11日)、日経産業新聞(9月19日)、朝日新聞(11月28日)で紹介されました。
また、本論文の筆頭著者である沼澤博道君(当時大学院修士2年)が、日本最大の化学ポータルサイトChem-Stationのスポットライトリサーチでハイライトされました。ベンゾキノンとピロールの2次元ランダム共重合により、柔軟な非晶質層状物質を設計・合成し、そのはく離によって得られるナノシートの水素発生電極触媒として優れた性能を発揮することを示した論文が、Communications Chemistry 誌に掲載されました。
Shoichiro Yano, Kosuke Sato, Jumpei Suzuki, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Amorphous 2D materials containing a conjugated-polymer network”
Communications Chemistry 2019,2, 97. 本論文は、Nature Research Chemistry CommunityのBehind the Paperのコーナーでハイライトされました。層状有機無機複合体の層間ゲストの酸化還元により、高速なはく離によるナノシート化が可能であることを示した論文が、Bulletin of the Chemical Society of Japan誌に掲載されました。
Yuna Yamamoto, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Redox-Mediated High-Yield Exfoliation of Layered Composites into Nanosheets”
Bulletin of the Chemical Society of Japan 2019,92, 779. 本論文は、Selected Paperに選出されました。層状ポリジアセチレン(PDA)にポリピロールを複合し、近赤外光(NIR)を熱に変換することでPDAの色変化を起こし、NIRの可視化と強度の定量化を行った論文が、Journal of Materials Chemistry C誌に掲載されました。これは、大阪工業大学工学部の藤井秀司教授との共同研究による成果です。
Machi Takeuchi, Hisato Kawashima, Hiroaki Imai, *Syuji Fujii, *Yuya Oaki, “Quantitative detection of near-infrared (NIR) light using organic layered composites”
Journal of Materials Chemistry C 2019,7, 4089.マテリアルズインフォマティクスを活用し、層状有機無機複合体から高効率・高収率でナノシートを得る方法に関する論文が、Advanced Theory and Simulations誌に掲載されました。これは、東京大学大学院新領域創成科学研究科の五十嵐康彦博士との共同研究による成果です。 Gentoku Nakada, Yasuhiko Igarashi, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Materials-Informatics-Assisted High-Yield Synthesis of 2D Nanomaterials through Exfoliation”
Advanced Theory and Simulations 2019, 2, 1800180. 本論文は、当該号の表紙裏側のイラストに採用されました。
本成果は、科学技術振興機構ホームページ、日経産業新聞(1月18日)、化学工業日報(1月21日)、日刊工業新聞(2月1日)、日本経済新聞(2月17日)で紹介されました。
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有機高分子材料について、分子設計とは異なる視点で、ナノ~マクロスケールの形態制御を行う様々な手法とその応用に関する最近の動向をまとめた総説(Review)が、Journal of Materials Chemistry A誌に掲載されました。
*Yuya Oaki, Kosuke Sato,“Crystal-controlled polymerization: Recent advances in morphology design and control of organic polymer materials”
Journal of Materials Chemistry A 2018, 6, 23197.層状構造を有するポリジアセチレンの刺激応答性色変化挙動が、金属イオンのインターカレーションによってどのように制御されるかについて、その場観察などの手法を用いてメカニズムを探究した論文が、Advanced Functional Materials誌に掲載されました。これは、アイントホーフェン工科大学のNico A. J. M. Sommerdijk教授との共同研究による成果です。
Machi Takeuchi, Karthikeyan Gnanasekaran, Heiner Friedrich, Hiroaki Imai, Nico A. J. M. Sommerdijk, *Yuya Oaki, “Tunable Stimuli-Responsive Color-Change Properties of Layered Organic Composites”
Advanced Functional Materials 2018, 18, 1804906.キノン誘導体結晶の表面を使い、高い導電性と電気化学特性を有する導電性高分子ナノシートが厚さ5 nmから制御して作製できる手法に関する論文が、ACS Applied Nano Materials誌に掲載されました。
Kosuke Sato, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Two-Dimensional Conductive and Redox-Active Nanostructures Synthesized by Crystal-Controlled Polymerization for Electrochemical Applications”
ACS Applied Nano Materials 2018, 1, 4218.当グループが最近進めている有機層状化合物(層状ポリジアセチレン)に関する成果が、理工学部のホームページでResearch Spotlight(日本語)に、英語で本大学の研究成果を紹介するKeio Research Highlight(英語)に紹介されました。これらの記事では、有機層状化合物の外部刺激に対する色変化挙動を制御する手法、それを応用して様々な外部刺激を可視化・定量化活用する一連の研究が紹介されています。是非ご覧下さい。
Research Spotlight(日本語): https://www.st.keio.ac.jp/education/research/201801.html
Keio Research Highlight(英語): https://research-highlights.keio.ac.jp/2018/06/b.htmlカルボキシ基を導入した導電性高分子をナノ構造化すると、リチウムイオン電池の負極活物質として高い容量を示すことを報告した論文が、NPG Asia Materials誌に掲載されました。
Hiromichi Numazawa, Kosuke Sato, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Multistage Redox Reaction of Conductive-Polymer Nanostructures with Lithium Ion: Potentials for High-Performance Organic Anode”
NPG Asia Materials 2018, 10, 397.層状ポリジアセチレンにゲスト分子を複合した構造を自己組織的に形成させる方法の開拓と、それを応用したデバイスによる摩擦力の可視・定量化に関する論文が、Advanced Materials誌に掲載されました。
Hideto Terada, Hiroaki Imai, *Yuya Oaki, “Visualization and Quantitative Detection of Friction Force by Self-Organized Organic Layered Composites”
Advanced Materials 2018, 30, 1801121.
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